ベトナム「税制革命」に中小企業の悲鳴

ベトナム政府が進める「税制革命」が、小規模事業者や個人商店を直撃しつつある。長年利用されてきた簡易課税制度を廃止し、2026年からはすべての事業者に対し、複雑な申告制度の導入を義務づける方針だ。狙いは税収の安定化と民間企業の成長促進だが、現場からは悲鳴が上がっている。

これまで、ベトナムでは約200万の零細事業者や個人経営者が「推定収入」を基に課税額を決める簡易的な方式を利用してきた。売上記録をきちんと残さない場合も多く、地域の税務官との非公式なやり取りで税額が決まることもしばしばだった。しかし、政府はこの方式を完全に廃止し、収入や支出を正確に申告する制度へ移行させる。その背景には、税収減と巨額のインフラ投資需要がある。OECDによれば、ベトナムの税収はGDP比16.8%とアジア太平洋平均を下回り、今後の公共投資や高齢化社会に備えるためには財源確保が急務となっている。

政府は「民間企業を経済の原動力に」と掲げ、外国資本や国有企業に依存する体制からの転換を目指す。高速鉄道や高速道路建設といった大型プロジェクトに加え、年々増大する年金や社会保障費への対応も必要だ。こうした財政需要に応えるため、税制改革は不可避とされる。また、長年の腐敗温床とされる税務行政を近代化し、公平な競争環境を整える狙いもある。

しかし、現実には零細事業者への負担が極めて大きい。新たにレジや会計システムを導入し、簿記の知識やスタッフ教育に費用をかける必要があり、従来よりも大幅な納税額増加が避けられない。SNS上では小売業者らの不満や苦境を訴える動画が拡散しており、地方の市場では閉店が相次いでいると伝えられる。政府は税制変更が直接の原因ではないと否定しているが、北中部のゲアン省では今年に入り数千の個人商店が廃業したという報告もある。

反汚職を掲げて多くの高官を失脚させてきた共産党政権にとって、公平な税制は重要な課題だ。しかし、現場での運用が不透明であれば、かえって不信感を強め、庶民の生活を圧迫しかねない。専門家からは「新しいルールを作るだけでなく、公平かつ透明に実行できるかが成否を分ける」との指摘も出ている。

ベトナムは「次のアジアの虎」として期待されているが、改革の重みを誰が背負うのかが問われている。経済成長の原動力として中小企業を位置づける一方、その中小企業を疲弊させる税制改革は逆効果となる恐れもある。2026年の完全移行を前に、政府がどこまで現場の声を取り入れ、制度運用を柔軟に行えるかが今後の成否を大きく左右しそうだ。

https://www.dw.com/en/is-vietnam-going-too-far-with-its-tax-revolution/a-73679554