労働者党、経済不安の中で最低賃金やAI時代の教育改革を提言

シンガポールは2025年、地政学的な緊張や貿易摩擦が続く厳しい環境の中で新たな章を迎えている。首相が示した通り、国際情勢の不安定さは今後も続く可能性が高く、国内経済への影響も避けられない。先ごろ人材省は「世界経済の不透明感が今後数カ月続き、特に外向き産業では雇用や賃金の伸びを抑える要因になる」と警告した。金融保険業、専門サービス業、運輸・倉庫業などで賃金期待の低下も確認されており、国内の労働市場は引き続き慎重な対応が求められている。

こうした状況の中、野党・労働者党(WP)は政府に対し、広く国民や関係者の意見を取り入れ、未活用の解決策も含めて検討するよう呼びかけた。同党は「真に強靭な国家を築くためにはあらゆる可能性を追求すべきだ」と強調している。

すでにガン・キムヨン副首相を中心に「経済レジリエンス特別タスクフォース」が立ち上げられ、2026年半ばまでに提言をまとめる経済戦略レビューも始動した。また、地域開発評議会による職業マッチング制度の設置も発表されている。しかし労働者党は、こうした将来への準備と同時に、目の前の課題にも早急に取り組む必要があると指摘する。具体的には、事業継続を脅かす高騰する賃料、スキルに見合わない雇用の増加、過去5年間で年平均0.7%にとどまる実質所得の伸びなどが挙げられる。同党は、JTCコーポレーションによる中小企業向け低賃料の産業スペース拡充や、潜在的な失業状態を定期的に追跡・公表する仕組み、さらには法定最低賃金の導入を改めて求めている。

また、AIの導入とその影響についても重要な課題として取り上げている。首相はAIによる生産性向上と新たな雇用創出の可能性を示したが、労働者党は同時に雇用の構造的変化によるリスクを指摘。教育と人材育成を経済のニーズに合わせて再設計する必要があると訴えた。教育省と人材省の連携によるカリキュラム設計やスキル不足分野への資金投入、学生へのキャリアガイダンス強化などを提案し、AI時代に必要な適応力や共感力といった人間的能力を育む教育への転換も呼びかけている。

さらに、社会的セーフティネットの強化も求めている。具体的には、25人以上の従業員を抱える企業での解雇手当の義務化や、失業保険の導入などが提案されている。こうした仕組みによって、AIや技術革新による労働市場の混乱から国民を守る狙いがある。

一方、新たに発表された政府主導の研修・実習プログラムについては、若者や中堅層のキャリア形成を支援するものとして評価しつつも、企業にとって単なる安価な労働力確保手段とならないよう強調した。研修終了後に正規雇用へつながるような透明性のある仕組みや、病休や安全な労働環境といった最低限の労働権利を保証することを求めている。

労働者党は「若者から中堅層まで、すべてのシンガポール人が安心してキャリアを築ける公平で持続可能な制度が必要だ」とし、第15期国会でこれらの提案を推進していく姿勢を示している。経済的不確実性が続く中で、政府と野党の政策論争が今後の国の進路を左右する重要な局面を迎えている。

https://www.wp.sg/news/ndr2025statement