ベトナムは今、「国家的飛躍」という大きなスローガンのもと、新たな時代の入り口に立っている。共産党大会で再任されたトー・ラム書記長は、向こう5年間、そして2045年という国家的節目に向け、これまでにない大胆な経済改革と成長戦略を掲げた。約1,600人の代議員が集まった今回の党大会は予定より早く終了し、強い合意形成、あるいは異論を許さない権力集中を印象づける形となった。トー・ラムの再任自体は既定路線だったが、問題は彼がどこまで約束を実行できるのかという点にある。
トー・ラムは前任者グエン・フー・チョンの死去を受けて18か月前に最高指導者の座に就いた人物で、もともとは公安省トップとして大規模な反腐敗運動を主導してきた。しかし最高指導者就任後、彼はそれまでの路線を転換し、改革と成長を最優先課題として掲げる。行政機構を大胆に再編し、省の数を63から34へ削減、10万人規模の公務員削減を打ち出すなど、そのスピードと規模は過去40年で例を見ないものだった。
象徴的なのが、政治局で採択された「決議68号」である。民間セクターを「国家経済の最も重要な原動力」と位置づけたこの決定は、社会主義体制のベトナムにおいて歴史的な転換点といえる。これまで経済の中核とされてきた国有企業と、民間企業を事実上同列に扱う姿勢が明確に示されたからだ。同時に、年率2桁成長、2030年までに民間企業数を倍増、2045年までに高所得・知識集約型経済への移行という極めて野心的な目標も掲げられた。
トー・ラムの構想の柱は、国際競争力を持つ「国家チャンピオン企業」、党の言葉でいう「リーディング・クレーン」の育成である。現在、東南アジアの大企業ランキングに名を連ねるベトナム企業は増えているものの、その多くは国有企業で、民間の大企業は依然として少ない。民間企業の大半は小規模で、200人以上を雇用する企業はわずか2%に過ぎない。彼が描くのは、1970年代の韓国で財閥が果たした役割を、ベトナム版として再現する構図だ。
もっとも、現実は簡単ではない。現在でも国有企業はGDPの約3割を占め、資金や土地、許認可で大きな優遇を受けている。さらに最近採択された別の決議では、国有企業も引き続き「リーディング・クレーン」と位置づけられ、保守派の巻き返しも見え隠れする。民間重視を掲げながら、実際には国有部門の影響力が依然として強いという矛盾が残る。
加えて、ベトナム経済は外国投資と海外市場への依存度が高い。輸出主導型の製造業は成長を支えてきた一方で、付加価値の低さという構造的課題を抱える。トー・ラム自身も、国内で生み出される価値が労働力提供にとどまっている現状に強い危機感を示してきた。サムスンをはじめとする外資系企業が製造業の中心を占める状況は、その象徴である。
国内には有望なIT企業も存在するが、数は限られている。最大の民間企業グループであるビングループは、不動産から教育、インフラ、EVまで手を広げる巨大コングロマリットだが、政治的支援なしに世界市場で成功できるかは未知数だ。実際、電気自動車事業は海外市場で苦戦しており、巨額の赤字を抱えている。
専門家の間では、国家主導で民間チャンピオンを育成する手法が、新たな政商や既得権益を生むリスクを指摘する声も強い。中小企業の活力を損なえば、雇用とイノベーションの源泉が失われかねないからだ。
ベトナム国民の勤勉さと、トー・ラムの強い意志に疑いはない。しかし彼がこの改革に挑む国際環境は厳しい。アメリカ市場への高い依存度、再び強まる保護主義、そして微妙な外交バランス。ベトナムが中所得国の壁を破り、本当に「国家的飛躍」を遂げられるかどうかは、これから数年の政策運営にかかっている。














