ベトナム国会は2025年6月14日、同国初となる「デジタル技術産業法(Law on Digital Technology Industry)」を可決しました。この法案は、国家としてのデジタル変革を本格化させ、ベトナムを地域のテクノロジー拠点へと押し上げることを狙ったものです。施行は2026年1月1日を予定しています。
この法律は、ソフトウェア開発、ハードウェア製造、AI、半導体、サイバーセキュリティ、IoT(モノのインターネット)などを含む幅広いデジタル産業を対象とし、技術の分類、投資インセンティブ、企業支援、国家による戦略的育成方針などが詳細に盛り込まれています。
特筆すべき点は、ベトナムがこれまでの「IT製品輸出国」から脱し、「デジタル製品・サービスの創出国」への転換を明確に打ち出していることです。国家は今後、技術人材の育成、大学との連携、スタートアップ支援、国内製品の導入促進などを通じて、国内企業のイノベーション力を底上げする予定です。
また、法案では「国家のデジタル技術製品」認定制度が設けられ、一定基準を満たす企業製品は国家主導のプロジェクトで優先的に採用されることになります。これは政府調達や公的機関での導入を通じて、国内企業に大きな追い風となるでしょう。
加えて、今回の法律ではデジタル技術分野への外国投資にも一定の門戸が開かれています。特に技術移転、研究開発拠点の設立、人材育成を伴うような投資は、税制上の優遇措置や規制緩和の対象となる可能性があります。
このような動きは、米中間の技術摩擦が続く中で、東南アジア全体のサプライチェーン再編にとっても重要な位置付けです。ベトナムはすでに、サムスンやインテルといった大手グローバル企業の製造・研究拠点を抱えており、今後は「製造」だけでなく「開発」や「設計」の拠点としても存在感を高めていく狙いがあります。
背景には、ベトナム政府の中長期的な経済戦略があります。従来の低コスト労働力依存からの脱却を目指し、持続可能で付加価値の高い産業構造への転換が進められているのです。今回の法整備は、その転換を制度面から後押しする柱の一つといえるでしょう。
今後は、施行に向けた省庁ごとのガイドライン策定、技術基準の明確化、産業データの整備などが進められていく予定です。国内外の企業にとっては、ベトナムのデジタル領域での展開を本格的に検討する絶好のタイミングと言えるかもしれません。














