シンガポールの中央銀行である金融管理局(MAS)は、2025年後半に国内経済の成長が減速する見通しを示した。上半期には予想を上回る堅調な成長を記録したものの、世界経済の逆風が国内経済に波及する可能性が高く、特に小売や外食といった内需中心の分野が影響を受けやすいと指摘されている。これらの業種は、すでに年初からの6カ月間で鈍化またはマイナス成長を経験しており、全体のGDP成長とは対照的な動きを示している。
MASの最新の四半期マクロ経済レビューによると、通年のGDP成長は前年の想定よりも底堅く推移する可能性がある一方で、後半は「比較的低調」となる見込みだ。背景には、米中貿易摩擦の影響や、8月以降に予定される米国のシンガポール貿易相手国への10%を超える関税がある。こうした貿易環境の不透明感は、輸出や現代的サービス業に加え、国内の消費活動にも影響を与えるとみられている。
2025年前半の成長を押し上げた要因のひとつは、米国向けの再輸出の前倒し効果だった。特にパソコンやスマートフォン、機械・設備、半導体などの中間財が米国向けに大幅に出荷されたが、こうした反動減は年後半に現れる見通しだ。国内では建設プロジェクトの積み上がりが一定の下支えになるものの、消費分野の回復は限定的とされる。
小売・外食産業の低迷は、単なる景気循環要因にとどまらず、高コスト構造や市場飽和、消費者嗜好の変化といった構造的課題が影響しているとMASは分析する。一方で、家計の財務状況は比較的健全であり、政府の支援策もある程度は消費下支え効果をもたらすとみられている。
明るい材料としては、金融市場の回復と投資家のリスク選好の高まりがある。株式や為替、投資信託の取引活動が活発化すれば、銀行や証券会社などの手数料収入を通じて成長の一助となる可能性がある。ただし、雇用面では後半にかけて需要が鈍化する可能性があり、企業は賃金抑制や変動給与の削減で対応し、人員削減は回避する動きが中心となる見通しだ。深刻な景気後退が起きない限り、大規模な失業には至らないと考えられている。
物価面では、水道料金や医療保険料の上昇が一部にあったものの、他の分野でのインフレは落ち着いており、コアインフレ率は前年同期比0.6%で前期と変わらなかった。国内の消費需要が弱いため、コスト上昇の価格転嫁も限定的になっている。
総じて、シンガポール経済は2025年後半に向けて減速感を強めると見込まれるが、家計の健全性や金融市場の底堅さが下支えとなる可能性がある。MASは、急激な後退ではなく緩やかな調整局面が続くとの見方を示しており、今後は国際貿易情勢と消費動向が最大の焦点となる。














