キプロスのニコス・クリストドゥリデス大統領は、首都ニコシアの大統領官邸で欧州地域委員会(CoR)の代表団と会談し、キプロスが担当するEU議長国任期(6か月間)における三つの主要優先課題を明らかにした。大統領はまず、最重要課題として「EUを市民により近い存在にすること」を掲げ、キプロスではEU支持率が70%を超えており、EU加盟国の中でも特に高い水準にあると強調した。市民がEUを自分たちの生活と直結した存在として実感できることが、統合の持続性に不可欠だという認識を示した形だ。
第二の優先課題として示されたのは、欧州の戦略的自律性の強化である。クリストドゥリデス大統領は、これは防衛や安全保障にとどまらず、EUの競争力や結束政策にも深く関わる問題だと述べ、より自立した欧州を築く必要性を訴えた。地政学的緊張や経済環境の変化が続く中で、EUが自らの力で安定と成長を確保できる体制づくりが求められているとの認識が背景にある。
三つ目の優先課題は、キプロスの地理的特性を生かし、中東地域とEUの関係をより緊密なものにすることだ。大統領は、キプロスが中東に近い位置にあることを踏まえ、地域とEUを結びつける架け橋の役割を果たしたいと述べた。キプロスは小規模な加盟国であり、隠れた意図を持たない「誠実な仲介者」として、地域の安定と協力に貢献できると強調した。
また、大統領は住宅問題を欧州全体が直面する重要課題の一つとして挙げ、手頃な価格の住宅確保に向けたEUレベルの取り組みを歓迎する姿勢を示した。さらに、議長国任期中に欧州地域委員会と緊密に協力していく意向を示し、同委員会の代表がキプロスで開催される複数の会合に参加することへの期待を語った。
これに対し、欧州地域委員会のカタ・トゥットー委員長は、会談への感謝を述べるとともに、地方・地域当局が市民とEUを結びつける上で果たす重要な役割を強調した。市長や地域首長といった地方レベルの代表者は、市民の満足だけでなく不満も直接感じ取る立場にあり、その声をEUに届けることが不可欠だと述べた。EUを市民に近づけるとは、ブリュッセルに高い「城壁」を築くことではなく、人々が自らの課題や不安を理解してくれる存在を身近に感じられるようにすることだと指摘した。
さらに、次期EU予算を巡る議論に触れ、欧州地域委員会は結束政策と分権化を重視していると説明した。一方で、加盟国レベルおよび欧州委員会レベルの双方で中央集権化が進んでいることに懸念を示した。地方や地域が果たす役割を軽視すれば、市民との距離はさらに広がるとの危機感がにじむ発言だった。
この会談には、欧州地域委員会の副委員長や各政治グループの代表者らが出席したほか、同委員会の写真担当者も同席した。また、キプロス自治体連合は、欧州地域委員会の執行部会合が2026年2月9日から10日にかけてニコシアで開催されると発表した。会合では、デジタル革新、研究、ブルー・テクノロジーが欧州の都市、地域、沿岸コミュニティの備えと回復力をどのように強化できるかが議論される予定で、環境的・社会的課題が深刻化する中、地方・地域当局の役割が改めて注目されることになりそうだ。














