シンガポール政府は、米国による新たな関税措置とそれに伴う世界的な貿易緊張の高まりを受けて、経済の即時的な対応と長期的な強化を目的とした新たなタスクフォース「経済レジリエンスタスクフォース(SERT)」を発足しました。この動きは、2025年の国内総生産(GDP)成長率の予測が0〜2%へと引き下げられ、景気後退のリスクも懸念される中での対策として注目を集めています。
タスクフォースの議長は、ガン・キムヨン副首相兼通商産業相が務め、政府高官や主要経済団体の代表者ら計8名がメンバーとして参加しています。具体的には、国家開発相、デジタル開発・情報相、人的資源相、運輸相、シンガポールビジネス連盟(SBF)会長、全国労働組合会議(NTUC)事務局長、シンガポール全国雇用者連盟(SNEF)会長などが含まれています。
このタスクフォースの主な使命は3つ。まず、国際的な動向を把握し、企業や労働者に影響を与える要因を分析しながら、政府の支援策に関する情報を効果的に伝えること。次に、製造業や半導体業界など特に打撃を受けやすい分野に対して迅速な支援を提供し、雇用の安定を図ること。そして最後に、シンガポール経済の持続的な強靭性を確保するための長期戦略を構築することが掲げられています。
背景には、米国がシンガポールを含む複数国に対し、10%の関税を基本とする新たな貿易制限を発表したことがあります。これは「相互主義関税」として、貿易相手国に対する報復的措置の一環であり、既にシンガポール企業には生産コストの上昇や受注キャンセル、サプライチェーンの混乱といった影響が広がりつつあります。特に中国と関連する製造業に依存する企業には深刻な打撃が予想されます。
こうした状況を踏まえ、政府は既存の支援スキームを強化しています。たとえば、企業向けに「エンタープライズ・ファイナンシング・スキーム(EFS)」による貿易融資の拡充や、「スキルズフューチャー・エンタープライズ・クレジット(SFEC)」を通じた人材育成への補助が行われています。加えて、キャリア転換を目指す中途人材への再教育支援「スキルズフューチャー・レベルアップ・プログラム」や、非自発的失業者への経済的支援も提供される「スキルズフューチャー・ジョブシーカー・サポート・スキーム」も実施中です。
全国労働組合会議(NTUC)もまた、労働者の再就職支援、キャリアコーチング、研修費の補助などを通じて、経済の波に翻弄されないセーフティネットの役割を担っています。企業に対しても、リストラの回避策を模索するよう働きかけ、職場での学び直しとスキル向上への投資を推奨しています。
今回のタスクフォース設立は、単なる短期的な危機管理ではなく、シンガポールが引き続き国際的な信頼を維持し、グローバル・ハブとしての地位を強化するための布石でもあります。新市場の開拓、イノベーション推進、生産性向上といった施策を通じて、今後の経済基盤の再構築と持続的成長に向けた道筋が描かれようとしています。














