シンガポール金融管理局(MAS)は、証券業界委員会(SIC)の助言を受け、企業買収・合併に関する行動規範(Take-overs and Mergersに関するコード)を改正し、2026年7月16日付で施行しました。主な変更点として、「支配」とみなされる議決権保有比率の閾値を20%から30%に引き上げたほか、解約手数料(ブレークフィー)の上限を対象企業の企業価値の1%に制限し、買収提案が確定的となった場合に限り支払いを認める規定を新設しました。これらは2025年5月にSICが開始した公開協議を経てまとめられたものです。
今回の改正の背景には、対抗入札を事実上排除しかねない過度な取引保護条項への懸念があります。従来は、買収意向を長期間明確にしない潜在的な買収者に対する時間的制約が存在せず、また独占交渉権や情報提供の格差が競争入札を妨げる要因になり得るとの指摘がありました。改正コードでは、意向不明瞭な状態が続く場合にSICが28日以内の意思表明を義務付けられるようにしたほか、対象企業は請求に応じて全ての買収候補者に同等の情報アクセスを提供する義務を負うことになりました。
MASおよびSICは、今回の改正が透明性の向上、株主保護の強化、競争的な入札プロセスの促進につながるとしています。買収提案に関わる企業や助言会社は、取引計画や独占交渉条項、株主とのコミュニケーション方針を見直す必要に迫られるとみられます。また、組織再編スキームに関する株主総会は発表から6カ月以内に開催することが新たに義務付けられるなど、シンガポールにおける買収実務は今後より厳格な手続き管理を求められることになりそうです。













