シンガポール中央銀行(MAS)は、2025年7月末に予定されている政策見直しにおいて、今年初めて為替政策の方向性を据え置く見通しです。経済指標の改善や企業の対応力が示す堅調さが、その背景にあります。
本件は、Bloomberg発の報道にもとづくもので、記事によれば、MASは“tariff resilience(関税耐性)”を示す経済状況を受けて、政策を維持する可能性が高まったとされています 。さらに、ロイターの報道によると、7月25日に実施されたアナリスト12人への調査では、その半数が政策の緩和、残りが据え置きを予想しており、見解が割れています 。
事実、2025年第2四半期のGDPは前年比4.3%増、前期比1.4%増と、前期の0.5%縮小から回復し、技術的な景気後退を回避しました 。また、4月に業界団体Maybankがこれまで想定していた2.4%成長予測を上方修正したほか、全体の経済見通しも慎重ながら改善傾向が見受けられます 。
シンガポールの金融政策は、他国とは異なり、金利ではなく、S$NEER(対貿易加重為替レート)の管理により行う独自の枠組みです。これは1981年以来続く制度で、物価安定と非インフレ的成長を促す目的で為替の賃率やバンド幅、中央値などを操作することにより実現されています 。今期も、金利操作ではなく為替バンドの“スロープ調整”などによる政策対応が主眼とされます。
本年1月と4月には、既に2度にわたる政策緩和が行われており、2025年の政策スタンスは当初から緩和方向が示唆されていましたが、7月の見直しでは一時的に動きを見合わせる可能性があります。市場関係者からは、「緩和の効果を評価してから次を判断すべき」との慎重論もあり、特に経済成長が一時加速しただけの“front‑loading(前倒し)”の影響が後半に及ぶ懸念が指摘されています 。
このような為替中心の政策運営は、貿易依存度が高いシンガポール経済にとって有効な手法とされてきました。多くの国際研究でも、開放性の高い経済では固定金利政策より、為替による柔軟な管理が安定をもたらすことが指摘されています 。
今後については、2025年下半期に前倒しされた輸出の反動や世界経済の不確実性が成長を鈍らせる可能性があるため、MASが秋以降に再び政策を見直す余地は残されています。一方で、現在の為替バンド維持による“据え置き判断”も、短期的には経済の過熱を防ぐ安全策と考えられます。














