キプロス分断を超えるビジネスの力、新たな越境ポイントへの期待も

キプロス島が民族間の対立で南北に分断されてから、すでに半世紀以上が経ちました。しかし、今、その分断を超えようとする新たな挑戦が、ビジネスの現場から生まれています。

2015年に設立された窓枠製造会社「SlimLine Frame」は、ギリシャ系キプロス人のアンドレアス・G・アンドレウ氏と、トルコ系キプロス人のエムレ・セルダル氏によって共同で創業されました。この会社は、島の南北双方に工場を持つ数少ない企業の一つであり、事業を通じて両コミュニティの協力関係を実現しようとしています。

アンドレウ氏は「このビジネスは、私の息子に“共に生き、働くことは可能だ”と示すためにやっている」と語り、セルダル氏も「我々は共通のビジョンと信頼を持っている」と続けました。

キプロスは2004年にEUに加盟しましたが、北部のトルコ系地域は事実上の独立状態にあり、EU法の適用が停止されています。それにもかかわらず、EUの「グリーンライン規則」によって、特定の品目に限り南北間の越境取引が認められています。例えば、建築資材や一部の食品などが対象となっており、近年は取引量も増加傾向にあります。2023年には、南北間で約1,600万ユーロ相当の取引が行われ、前年より約10%増加しました。

ただし、越境ビジネスには多くの課題が伴います。貨物は南北両側で当日に通関手続きを済ませる必要があり、チェックポイントでの遅延も頻発しています。さらに、トルコ系企業は南部の銀行サービスにアクセスできないため、取引は現金に限定されがちです。

こうした中、EUは「ワンストップショップ(EU OSS)」という支援プログラムを通じて、南北間の貿易拡大を後押ししています。元チームリーダーのアレクサンダー・アポストリデス氏は、「EU OSSの9割はトラブル対応だが、この支援がなければ北部は完全に孤立してしまう」と語っています。

2024年には、EasyJetの創業者として知られる英国の起業家ステリオス・ハジ=イオアヌ氏が、SlimLine Frameへの資金支援を表明。彼は「この取り組みは理解と協力、そして経済的繁栄を促進する」と述べました。

キプロスは小さな島です。しかし、だからこそ「分断の壁」を越えたビジネスの必要性と価値が、今あらためて見直されています。

https://www.reuters.com/world/middle-east/cyprus-business-challenges-old-divisions-amid-hopes-new-crossing-points-2025-05-13