ASEAN事務総長、英国訪問で関係強化を加速

2026年2月6日から11日にかけて、Association of Southeast Asian Nations(ASEAN)のカオ・キム・ホーン事務総長が英国を実務訪問した。今回の訪問は、ASEANと英国の対話パートナーシップ5周年という節目にあたり、両者が築いてきた協力関係を再確認するとともに、今後の連携強化に向けた方向性を共有する重要な機会となった。

この5年間で、英国は「ASEAN–UK行動計画(2022–2026)」に基づき、政治・安全保障、経済、社会・文化の三本柱すべてにおいて具体的な成果を積み上げてきた。英国はインド太平洋地域における安定と繁栄、そして開かれた地域秩序の維持を重視し、ASEAN中心性を尊重する姿勢を明確にしている。今回の会談では、現行計画の成果を踏まえつつ、次期行動計画に向けてASEANの優先課題とどのように整合させていくかが議論された。

ロンドンでは、事務総長は英国外相イヴェット・クーパー氏と会談し、パートナーシップ発足以降の進展を総括した上で、地域および国際社会にとって相互利益となる協力の拡大を確認した。また、インド太平洋担当大臣との協議では、能力構築や人材育成を通じた地域レジリエンスの強化が主要テーマとなり、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の枠組みの下での協力深化が改めて強調された。

経済分野では、英国ビジネス・貿易省の閣僚やASEAN貿易特使らと会談し、中小零細企業(MSME)支援、サプライチェーンの強靭化、デジタル経済の発展などを中心に協力拡大の可能性を探った。アジアハウスでのラウンドテーブルや英ASEANビジネス評議会のイベントでは、ASEANの急成長するデジタル市場や地域統合の進展が紹介され、ビジネス間連携の強化が呼びかけられた。

学術・社会分野でも幅広い交流が行われた。ウォーリック大学で開催された「2026年ウォーリック経済サミット」では、ASEANの経済見通しや開発優先課題、英国との協力機会について基調講演を実施。さらに、持続可能な都市開発や強靭なインフラ整備に関する意見交換、女性のSTEM分野進出を支援する奨学プログラム関係者との交流も行われ、包摂的成長へのコミットメントが示された。ロンドンではASEAN各国大使らとの昼食会を通じて、対英協力の調整と実務的連携の強化も確認された。

文化・教育分野では、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)やブリティッシュ・カウンシルを訪問し、芸術、教育、クリエイティブ産業での協力可能性について議論した。こうした分野横断的な交流は、経済・安全保障にとどまらない包括的なパートナーシップの深化を象徴している。

今回の訪問は、ASEANと英国が単なる対話相手にとどまらず、実務的かつ戦略的な協力関係へと発展していることを示すものとなった。インド太平洋を取り巻く地政学的・経済的環境が変化する中、両者の連携は地域の安定、持続可能な成長、そして開かれた国際秩序の維持に向けた重要な柱となる。5周年を迎えたパートナーシップは、次の段階へと進む準備を整えつつある。

https://asean.org/summary-of-the-working-visit-of-the-secretary-general-of-asean-to-the-united-kingdom