セーシェル共和国は、インフレ率が2%未満、実質GDPはパンデミック前の水準へ回復、公的債務比率は2030年までに50%以下へと順調に低下しつつあり、サブサハラ・アフリカで最も高い一人当たり所得を維持しています。この安定状況はかつての経済危機とは対照的です。その背景をIMFは「包括的な経済改革」にあると分析します 。
2000年代半ば、セーシェルは拡張的財政政策と固定為替制を採用し、債務財政の拡大や外貨準備の枯渇を招いていました。2008年には公的債務がGDPの192%を超え、輸入支払いはわずか2週間分しか外貨準備がありませんでした ()。そこで政府はIMF支援のもと、為替統制の撤廃と通貨の変動相場制への移行、間接補助金の廃止と社会保障への振替、債務再編などを実施。これらの措置により、インフレ率が急減し、外貨準備は3ヶ月分以上に回復、公的債務も5年以内に70%台へと減少しました 。
2020年のCOVID‑19パンデミックは観光業に大打撃をもたらしましたが、事前の財政・為替のバッファーがあったことで政府は迅速に支援策を講じ、観光業は2021~22年に急回復、2022年の成長率は13%近くまで上昇しました。外貨準備高も輸入の3ヶ月分以上を維持し、固定相場からの脱却と通貨の調整も柔軟に行われました 。
2024年の実質GDP成長率は約2.9%、インフレ率は1.7%、財政面ではプライマリー黒字が3.2%と報告され、外貨準備は774百万ドル(輸入カバーで3.8ヶ月分)に達しました ()。また、IMFのEFF・RSFプログラムの下、2025年末までにSDR約8.3 M(約41.7 Mドル)と5.3 Mドル規模の資金支援が実施されました ()。
今後の課題として、観光産業の競争激化やEU経済成長の鈍化、気候変動リスクなどがリスク要因として挙げられます。IMFは引き続き、財政統制の維持、財政・外部ポジションの強化、公的金融管理能力の向上、気候変動への対応、統治の透明化とデジタル化などを推奨しています ()。
セーシェルの経済再建は、堅実な政策設計と制度改革により達成された成功例であり、特に海洋依存の高い小規模経済国への示唆に富んでいます。観光復興と併せて、今後も制度能力の強化、収入源の多様化、気候対応型投資が求められています。














