ベトナムのファム・ミン・チン首相は2025年6月28日、ハノイで開催された英国企業とのラウンドテーブルにおいて、両国の経済関係をより深く、より実質的なものにするための6つの戦略的な「突破口(breakthrough)」を提示しました。首相は、これらの取り組みにより、今後数年で両国の貿易額と直接・間接投資額をそれぞれ100億ドル以上に引き上げることを目標に掲げています。
まず第一に、経済協力を市場原理に基づく実効的かつ安定したパートナーシップへと昇華させる必要性が示されました。英国が持つ先進的な技術やサービス、資本市場の強みを活かし、ベトナムの産業基盤を強化していくことが求められています。
第二の突破口は、デジタルトランスフォーメーションの推進です。AIやビッグデータ、ブロックチェーンといった第4次産業革命を支える技術分野での連携強化が強調され、技術革新を通じて経済の競争力を高める方針が示されました。
第三は、気候変動対策とグリーン経済への移行です。ベトナムは2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しており、再生可能エネルギー分野での投資や協力、グリーンファイナンスの導入が英国との連携テーマとなっています。
第四の分野として挙げられたのは、教育・医療・文化・スポーツでの協力です。特に教育分野では、英語を第二言語として普及させるために、英国による人材育成支援や学校との提携が期待されています。
第五は、国際金融センターや自由貿易区の開発です。ホーチミン市とダナンでの国際金融センター構想を通じ、ベトナムの金融市場を高度化し、外国資本の流入を加速させる狙いがあります。
そして第六に、ベトナム国内の企業をグローバルなサプライチェーンへと統合し、ユニコーン企業の創出を支援する産業戦略が示されました。特にテクノロジー分野での成長企業の発掘・育成は、英国のノウハウとの融合によって現実味を帯びています。
チン首相は、これらの取り組みを支える制度整備にも言及し、行政手続きの簡素化、法制度の整備、通関や認証制度の国際標準化を進めると表明しました。また、UK–Vietnam Free Trade Agreement(UKVFTA)やCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)といった多国間協定を通じて、貿易と投資の障壁を取り除く姿勢も強調されました。
今回の対話には、英国商工会(BritCham)やアストラゼネカ、HSBC、KPMGなど、幅広い業界の英国企業が参加し、ベトナムの成長ポテンシャルに対する強い関心を示しました。これらの企業は、ベトナムのグリーンファイナンス政策や自由貿易区開発などにおいて、積極的にパートナーシップを構築していく意向を表明しています。
今後、これらの「6つの突破口」が具体的な政策や事業として動き出せば、英国からの投資は一層活発化し、とりわけ再生可能エネルギー、国際金融、先端技術といった分野で新たな協力関係が築かれることが期待されます。教育・文化分野での協力が進めば、ベトナムにおける英語教育の水準向上や、人的交流の深化も見込まれます。
ファム・ミン・チン首相の提案は、単なる経済成長だけでなく、持続可能で包括的な発展モデルを志向しており、両国関係を新たな段階へと導く一歩といえるでしょう。ベトナムと英国が共に未来志向の協力を進めることで、地域と世界の安定と繁栄にも貢献することが期待されています。














