シンガポール政府、景気後退の可能性を警告

2025年5月、シンガポール政府は、同国経済が「テクニカルリセッション(景気後退)」に陥る可能性があると警告しました。これは、2025年第1四半期の国内総生産(GDP)が前期比で0.6%減少したことを受けたもので、2四半期連続のマイナス成長が続けば、テクニカルリセッションと見なされます。この経済の減速は、米国による新たな関税措置が発表される前にすでに始まっており、シンガポール経済の先行きに対する懸念が高まっています。

シンガポールは、米国との自由貿易協定を結び、米国に対して貿易赤字を抱えているにもかかわらず、2025年4月に米国から10%の関税を課されました。これにより、シンガポールの主要な輸出品である医薬品やAI関連チップなどが影響を受ける可能性があり、同国の輸出依存型経済にとって大きな打撃となっています。シンガポール通貨庁(MAS)は、これらの関税が企業の利益を圧迫し、国内の総需要を減少させる「生産税」として機能すると指摘しています。

政府は、2025年のGDP成長率予測を従来の1%〜3%から0%〜2%に下方修正しました。また、通貨政策については、1月と4月に緩和措置を実施したものの、現時点では現行の政策スタンスを維持する方針です。MASのエドワード・ロビンソン副総裁は、アジア諸国に対し、報復関税の応酬を避け、デジタルサービスや投資などの分野で地域内の貿易統合を強化するよう呼びかけています。

シンガポール政府は、関税の影響を受ける企業や労働者を支援するため、経済機関や労働組合と連携したタスクフォースを設置しました。このタスクフォースは、短期的な支援策と長期的な戦略の両面から対応を検討しています。また、米国との間で医薬品輸出やAIチップのアクセスに関する交渉も進められており、シンガポールの主要輸出産業を保護するための取り組みが続けられています。

今後、シンガポール経済がテクニカルリセッションに陥るかどうかは、第2四半期の経済指標や米中貿易関係の動向に大きく左右されるでしょう。政府と中央銀行は、経済の安定と成長を維持するため、柔軟かつ迅速な対応が求められています。

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2025-05-24/singapore-government-warns-economy-could-face-technical-recession