シンガポールで、公共部門が保有するデータを「信頼できる外部パートナー」と共有できるようにする法改正が成立した。1月12日、国会で公共部門(ガバナンス)法(PSGA)の改正案が可決され、今後は政府機関同士に限られていたデータ共有の枠組みが、一定条件のもとで民間団体にも拡張される。これにより、社会福祉団体や地域団体、自助団体など、政府と連携して公共目的を担う組織が、必要なデータを活用できる道が開かれる。
これまでPSGAは、公共部門内でのデータ共有のみを認めてきた。しかし現実には、障がい者支援や低所得世帯支援などの現場では、政府機関と民間団体が協働して支援を行うケースが多い。SG Enableや華人発展支援協会(CDAC)、Mendaki、Sinda、ユーラシア協会などがその代表例だ。法改正後は、こうした団体と政府が、正当な公共目的のためにデータを共有できるようになる。
ただし、無制限な共有が認められるわけではない。改正PSGAでは、三つの厳格なセーフガードが設けられている。第一に、データ共有は従来と同じく、公共利益に資する七つの目的に限定されること。第二に、個別のデータ共有案件ごとに、担当大臣またはその代理人による明確な承認が必要となること。どのデータを、どの団体に、何の目的で提供するのかを具体的に定めなければならない。第三に、データを受け取る外部団体が、公共部門と同等のデータ保護・セキュリティ基準を満たすことが求められる。
デジタル開発・情報省のジャスミン・ラウ国務大臣は、今回の改正を「慎重に進化させた枠組み」と表現した。政府内でのデータ共有によって、これまで政策立案や給付制度の迅速化が実現してきたが、その成果を政府外の信頼できるパートナーにも広げる狙いがある。一方で、目的の明確化、高レベルの監督、強固な説明責任を維持することが不可欠だと強調した。
背景には、従来のデータ共有手段の限界がある。これまでは本人同意や慣習法上の公共利益、個別法令に依存してきたが、連絡先が変わりやすい脆弱な立場の人々に迅速に支援を届けるには不十分な場面も多かった。複数のデータセットや団体が関わる場合、同意取得が大きな負担となり、結果として支援が遅れる恐れもあった。今回の法改正は、こうした「隙間」を埋めるための明確な法的根拠を与えるものとされている。
同時に、責任の拡大も伴う。外部団体の職員がデータを不正利用した場合、罰金や禁錮刑といった刑事責任を問われる可能性がある。政府は、問題があれば承認を取り消し、データ共有を停止する権限も持つ。国会審議では、過去の接触追跡アプリを巡る議論を踏まえ、透明性や監査体制をどう確保するかについても活発な意見が交わされた。公開登録簿の設置など、今後の運用次第でさらなる改善が検討される見通しだ。
政府は、この改正によって個人情報保護へのコミットメントを維持しつつ、支援を必要とする人々に、より早く、より的確で、より連携したサービスを提供できるようになると説明している。公共サービスの現場が複雑化する中で、信頼に基づく官民連携をどこまで進められるかが、今後の注目点となりそうだ。














