キプロスで政権中枢を揺るがす事態が起きた。ニコス・クリストドゥリディス大統領の最側近であり、大統領府長官を務めていたシャランボス・シャランボス氏が、政府腐敗を示唆するオンライン動画の公開を受けて辞任した。動画は、大統領との近い関係を利用し、投資希望者に便宜を図る見返りとして金銭を受け取っていたかのような内容を含んでおり、国内外で大きな波紋を広げている。
大統領は声明で、シャランボス氏の辞任を受理したことを明らかにし、今回の判断は「疑惑が事実ではないという自信と信頼に基づく行動」だと説明した。さらに、同氏を勤勉で誠実な人物と評価した上で、「国家を向上させる取り組みにおいて貴重な補佐官を失うことになった」と述べ、辞任を惜しむ姿勢を示した。
一方、シャランボス氏本人はフェイスブック上で、自身の政府での職務が「国家や大統領を傷つけるための操作の道具にされることは決して許さない」と反論した。問題の動画については、意図的な歪曲と選択的編集によって、虚偽かつ誤解を招く印象を作り出したものだと主張している。
問題の動画には、シャランボス氏のほか、元エネルギー相や大手建設会社の最高経営責任者が登場し、大統領との親密な関係を誇示しながら、外国からの投資を呼び込めるかのような発言をする様子が映っている。さらに、大統領が2023年の大統領選挙で、法定上限である100万ユーロを超える選挙資金を、帳簿外の現金献金として受け取ったとする深刻な疑惑も提示された。
中でも最も重大とされるのは、ロシアのオリガルヒに対するEU制裁を、企業からの資金提供と引き換えに阻止しようと政府が動く可能性を示唆している点だ。これに対しキプロス当局は、動画は悪意ある偽情報攻撃であり、過去に他国を標的にしたロシア発の情報工作と酷似していると指摘している。
治安当局の初期分析では、約8分半の動画には「ドッペルゲンガー」と呼ばれる組織的なロシアの偽情報キャンペーンの特徴が見られるとされ、2021年にEU諸国や米国、イスラエルを標的にした作戦と同系統だと結論づけられた。動画が拡散したのは、キプロスがEUの輪番議長国に就任した直後であり、ウクライナのゼレンスキー大統領を強く支持してきた同国の立場を踏まえると、政治的意図を疑う声が政府内で高まっている。
クリストドゥリディス大統領は、EU側から議長国就任中にこうした「ハイブリッド攻撃」の標的になる可能性について事前に警告を受けていたことを明らかにし、現在はEU加盟国や第三国の協力も得ながら調査を進めていると述べた。しかし野党は、大統領と政権に対する批判を強めており、今回の騒動が過去から指摘されてきた政府腐敗疑惑を再燃させたとして、政治責任を厳しく追及している。














