キプロスEU議長国、次期Horizon Europeで部分合意を目指す

2025年1月1日からEU理事会議長国を務めるキプロスは、EUの次期研究・イノベーション枠組み計画である**Horizon Europe**(2028〜2034年)について、任期中に主要項目に関する「部分的一般方針(partial general approach)」をまとめることを目標に掲げている。6月末までに策定される予定のこの文書は、予算規模や監視体制、今後創設が予定されている欧州競争力基金(European Competitiveness Fund)と関連する条項を除外した形で、加盟国間の共通認識を示すものとなる。

EU理事会議長国は、27加盟国の利害を調整しながら議論を前に進める「公正な仲介役」として重要な役割を担う。キプロス政府は、次期EU長期予算(多年度財政枠組み)を巡る全体交渉と並行して、研究枠組み計画の議論を進め、「指標的な数値を含む、十分に成熟した交渉ボックス」を提示したい考えだ。これにより、EU各国首脳がHorizon Europeにどの程度の予算規模を想定しているのか、その輪郭が初めて見えてくる可能性がある。

キプロスの議長国プログラムでは、研究・イノベーション分野において「卓越性を促進しつつ、加盟国間のイノベーション格差を縮小し、単一市場の統合を深める、バランスの取れたEUの研究環境」を目指す方針が強調されている。こうした中で焦点となっているのが、研究開発力の弱い国を支援する「Widening」措置の扱いだ。

前任のデンマーク議長国の下で、Wideningに関連する条文は交渉文書内で「ブラケット(留保)」扱いとされ、多年度予算を担当する特別作業部会に委ねられた。これは事実上、研究政策ではなく財務当局主導の交渉に移されたことを意味し、Widening措置が他分野の取引材料として使われかねないとの懸念を招いている。欧州議会の欧州人民党(EPP)所属議員で、非公式のWideningタスクフォース創設者でもあるエステル・ラコシュ氏は、キプロス議長国がこの問題を再び研究作業部会の正式議題に戻すことへの期待を示している。

これに対し、キプロス政府の報道官は、現時点ではWideningに関する議論は依然として特別作業部会にあるとし、「今後の行方はまだ見通せない」と述べるにとどめている。キプロス自身は、現在Widening対象国15か国の一つだが、欧州委員会の提案では、研究実績が向上した「移行国」グループに分類され、将来的な能力構築支援からは除外される可能性がある。

Horizon Europe以外でも、キプロス議長国はスタートアップや革新的企業の成長支援を重要課題としている。欧州委員会が年初に提示予定のEUイノベーション法(EU Innovation Act)を通じて、資金調達へのアクセス改善や企業のスケールアップを後押ししたい考えだ。また、大学や研究機関、企業に助成を行う石炭・鉄鋼研究基金(Research Fund for Coal and Steel)の改正交渉も進める予定となっている。

さらに、EUのグローバル・ゲートウェイ戦略や戦略アジェンダ2024〜2029と整合する形で、国際的な研究・イノベーション連携や科学外交の重要性も強調されている。加えて、域内市場を巡る障壁解消や欧州競争力基金に関する議論、スタートアップの越境展開を容易にするEU共通の法人制度「第28の制度(28th regime)」についても、キプロス議長国の下で本格的な検討が始まる見通しだ。これら一連の動きは、EUの研究・産業政策の方向性を左右する重要な半年間となる可能性を示している。

https://sciencebusiness.net/news/planning-fp10/cypriot-eu-presidency-aims-deliver-partial-agreement-horizon-europe