国際通貨基金(IMF)は2025年5月15日、シンガポールにおける2025年の第4条協議(Article IV Mission)を完了したと発表しました。この協議は、IMFの野崎雅弘氏が率いるチームが、シンガポール当局および関係者と5月5日から15日まで行った経済政策や金融状況に関する議論の成果をまとめたものです。
IMFの報告によれば、シンガポール経済は2024年に4.4%の成長を遂げ、前年の1.8%から大きく回復しました。これは主に世界的なテクノロジーサイクルの好転によるものです。また、インフレ率は2024年末に1.5%、2025年3月には0.9%まで低下し、物価の安定が進んでいます。
しかし、最近の世界的な貿易緊張の高まりと政策の不確実性の増大により、2025年の成長率は1.7%に減速する見込みです。インフレ率も引き続き低水準で推移し、2025年の予測では総合インフレ率が1.1%、MAS(シンガポール金融管理局)のコアインフレ率が1.0%とされています。
このような経済の減速とインフレの低下を受けて、MASは2025年1月と4月に金融政策を緩和しました。IMFは、さらなる金融緩和の余地があるとしつつも、インフレの上振れリスクや世界的な金融状況の急変に対する警戒を怠らないよう提言しています。
財政面では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の拡張的な財政政策が適切であると評価されています。家計や企業への支援、インフラ投資の強化が国内需要を下支えし、長期的な成長を促進するとの見解が示されました。また、シンガポールは十分な財政余力を有しており、必要に応じて一時的かつ的を絞った財政支援を行うことが可能です。
金融セクターについては、銀行が十分な資本と流動性を保持し、健全性を維持していると報告されています。ただし、世界的な金融状況の急激な引き締めに対するリスク管理の重要性が強調されました。
さらに、IMFはシンガポール政府の「フォワード・シンガポール」イニシアチブを歓迎しています。この取り組みには、若年層の家族支援のための育児休暇の拡充、低所得の初回住宅購入者への補助金強化、低所得労働者や退職者への年金支援の拡充などが含まれています。また、失業者への一時的な財政支援や、労働者の再教育、企業のAI技術導入支援なども進められています。
IMFは、シンガポール当局との建設的な協議と協力に感謝の意を表明し、今後も経済の安定と成長に向けた取り組みを支援していく方針です。














