シンガポール、長期競争力確保へ経済戦略を全面見直し

シンガポール政府は8月4日、世界的な地政学的変化や技術革新による構造的転換を受け、今後の競争力維持を目的とした経済戦略の見直しに着手すると発表した。ガン・キムヨン副首相兼通商産業相は会見で、企業や労働者にとって魅力的な機会を提供し続けるための長期的な経済青写真を描くことが狙いだと説明した。

今回の見直しは、今年4月に設立された「経済レジリエンス・タスクフォース」の取り組みの一環であり、特に米国による新たな関税措置の影響に対応するものとなる。タスクフォースは当初、短期的な支援策や既存の支援制度の情報共有、さらには長期戦略策定の3つの分野で活動していたが、今回の経済戦略レビューがその長期戦略分野を引き継ぐ形となる。政府は今後数か月をかけ、企業や労働者、各種団体との広範な意見交換を進め、来年初めには作業状況と主要提言を公表、最終報告書は2026年半ばにまとめる予定だ。

この動きの背景には、米国が発表した新たな関税政策がある。ドナルド・トランプ米大統領は、8月1日の期限を前に、69か国を対象に10〜41%の関税を課す新方針を打ち出した。さらに「迂回輸入」とされる製品に対しては40%の関税が適用される。シンガポールは最低ラインとなる10%の関税対象だが、ガン副首相は、米国の平均関税率は年初の約2%から15%前後へ急上昇する見込みだと指摘し、「依然として大きな不確実性が残る」と警鐘を鳴らした。今後は製薬や半導体、航空宇宙など特定分野に追加関税が課される可能性もあり、企業はサプライチェーンの再編を迫られることになる。

こうした短期的なリスクに対応するため、政府は「ビジネス適応助成金」を創設し、シンガポール経営者連盟(SBF)とも連携して追加支援の必要性を検討している。また、労働者への影響を注視し、全国雇用者連盟(SNEF)や全国労働組合会議(NTUC)と連携して必要なサポートを提供していく方針だ。だが同時に、将来の経済基盤を守るためには長期戦略の策定が不可欠であり、今回の経済戦略レビューがその中心的役割を担う。

このレビューは5つの委員会によって進められる。グローバル競争力の強化、技術革新の活用、スタートアップ・起業支援、生産性と人材力の向上、そして持続可能性を含む経済全体のレジリエンス強化が主要テーマとなる。特にAIなどの先端技術活用や国際的な投資誘致、シンガポール企業の海外展開支援が焦点となる見通しだ。

ガン副首相は、シンガポールには高品質なインフラや熟練した労働力など長年培ってきた強みがあると強調し、それらを最大限に活かすことで新たな成長機会を創出できると述べた。米中をはじめとする大国間の通商交渉が不透明な中、シンガポールは堅固な基盤を武器に変化に対応し、長期的な経済の持続可能性と競争力を確保する構えだ。

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