Pax Silica始動、AI時代の新経済同盟

2025年12月12日、米国務省の経済担当次官であるジェイコブ・ヘルバーグ氏は、日本、イスラエル、オーストラリア、シンガポール、韓国の代表とともに、新たな国際枠組み「Pax Silica(パックス・シリカ)」の発足を正式に宣言する「Pax Silica宣言」に署名する。この取り組みは、ドナルド・トランプ大統領が掲げる「経済力を通じて平和と安全を実現する新たな経済国策」の具体化として位置づけられており、自由企業、民間投資、そして経済の力を外交と安全保障の中核に据える点が大きな特徴だ。今後、さらに多くの国が署名国として加わる見通しとなっている。

Pax Silicaは、従来の同盟や多国間枠組みとは一線を画す、新しいタイプの国際パートナーシップだ。人工知能(AI)時代における経済的潜在力を最大限に引き出すことを目的に、世界最先端のテクノロジー企業を抱える国々が連携し、半導体や計算資源(コンピュート)、重要鉱物、エネルギーといった分野を「共有すべき戦略資産」として位置づける点に、この枠組みの革新性がある。国家がAIや半導体を単なる産業政策の対象ではなく、地政学的な基盤として共同で管理・強化しようとするのは、これが初めての試みとなる。

米国政府は、このPax Silicaを「米国型AI外交の完成形」と位置づけている。市場を形成し、国際的な連携を主導しながら、同時に自国と同盟国の国益を守るという考え方だ。トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官は、AIこそが次世代の経済力と国家競争力の中核になると早くから認識しており、今回の宣言はその戦略的洞察を実際の政策と国際協調へと落とし込むものとなる。

同日後半には、ワシントンD.C.でPax Silicaサミットが開催される予定で、米国、日本、韓国、シンガポール、オランダ、イスラエル、オーストラリア、アラブ首長国連邦、カナダ、そして欧州連合(EU)が参加する。ここでは「経済安全保障は国家安全保障であり、国家安全保障は経済安全保障である」という新たな地政学的コンセンサスが共有される見通しだ。参加国は、サプライチェーンの強靱化、特定国への過度な依存や単一障害点の解消、信頼できる技術エコシステムの普及といった課題について、共同で取り組む方策を協議する。

さらにサミットでは、通信・データインフラ、計算資源と半導体、先端製造、物流、鉱物の精錬・加工、エネルギーといった幅広い技術分野を横断する「旗艦プロジェクト」への協力機会も模索される。Pax Silicaは、単なる宣言や対話の場にとどまらず、実際の投資と産業連携を通じて、AI時代の国際秩序と経済構造を形作っていく枠組みとなる可能性が高い。今回の宣言とサミットは、テクノロジーと地政学が不可分となった現代において、同盟国がどのように協調し、競争力と安全保障を同時に高めていくのかを示す重要な一歩となりそうだ。

https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2025/12/under-secretary-helberg-will-kick-off-pax-silica-summit-with-landmark-declaration-signing