シンガポール、EU研究枠組み参加を支援する新基金を始動

シンガポール政府は12月5日、欧州連合(EU)の研究・イノベーション枠組みプログラム「ホライズン・ヨーロッパ」への参画を後押しするため、新たに「シンガポール・ホライズン・ヨーロッパ補完基金(Singapore-Horizon Europe Complementary Fund)」を立ち上げたと発表した。この基金は、シンガポールを拠点とする研究者や研究機関がホライズン・ヨーロッパの国際共同研究プロジェクトに参加する際の資金的な障壁を下げ、欧州との研究・技術協力を一段と強化することを目的としている。

今回の補完基金の特徴は、EU側の研究助成に直接アクセスできない場合でも、シンガポール政府が国内の対象研究主体に対して資金支援を行う点にある。対象となるのは、ホライズン・ヨーロッパの「ピラーII(グローバル課題と欧州産業競争力)」における共同研究で、シンガポールが重点分野と位置づける研究領域が中心となる。これにより、シンガポールの大学や研究機関、企業は、欧州の研究者や産業界と対等な立場で国際的な研究コンソーシアムに参加しやすくなる。

あわせて、シンガポール国家研究財団(NRF)は、ホライズン・ヨーロッパに関心を持つ国内研究者を支援するため、ナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)を設置した。これにより、制度の仕組みや応募手続き、研究テーマの選定などについて、専門的な助言や実務的なサポートを受けることが可能となる。さらに、2026年1月にはNRF主催の説明会も予定されており、研究者コミュニティに対する周知と参加促進が本格化する見通しだ。

この取り組みは、EUとシンガポールの長年にわたる研究・イノベーション分野での協力関係を一層深化させるものと位置づけられている。国境を越えた研究協力は、気候変動、デジタル化、医療、エネルギーといった地球規模の課題に対応するうえで不可欠であり、今回の補完基金はそうした国際連携を現実的に支える制度的基盤となる。

背景には、シンガポール政府が進める大規模な研究・イノベーション投資計画がある。同国は「RIE2030」プログラムの下、今後5年間で370億シンガポールドル(約245億ユーロ)を研究・イノベーション・企業活動に投じる方針を掲げており、これは前回サイクルから32%増となる。基礎科学から社会実装までを一体的に推進し、研究成果を具体的な社会的価値へと結びつけることが狙いだ。

一方、EU側も研究・イノベーション分野における国際協力を戦略の柱に据えている。EUの「研究・イノベーションに関するグローバル・アプローチ」は、世界中の優れた研究者やイノベーターとの連携を通じて、競争力と持続可能性を高めることを目指しており、ホライズン・ヨーロッパはその中核的な実施手段となっている。ホライズン・ヨーロッパでは、個人研究者向けのフェローシップや研究拠点設立支援、共同研究、さらには欧州でのスタートアップ設立支援まで、多様な参画の形が用意されている。

今回の補完基金の創設により、シンガポールの研究者にとっては欧州との連携機会が大きく広がり、EUにとってもアジア有数の研究・技術拠点との結びつきを強化する効果が期待される。国際情勢が不確実性を増す中でも、科学技術分野における協調と相互補完は、長期的な成長と課題解決を支える重要な基盤であり、EUとシンガポールの協力関係は今後さらに存在感を高めていくとみられる。

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