香港の労働市場は岐路に立たされている。7月の失業率は3.7%と2022年11月以来の高水準に達し、特に飲食業では6.4%に上昇した。こうした状況の中、近く発表される行政長官の施政報告は、労働力輸入と人工知能(AI)の二大課題を回避することはできない。経済の安定と市民雇用の保護をいかに両立させるか、包括的かつ具体的な対策が急務となっている。
2023年9月に導入された補充労働力計画は、選択肢ではなく必要性から生まれた。人口流出に伴う人手不足は事業継続を脅かすまでに深刻化していた。類似の課題に直面したシンガポールは、就労ビザ制度を整備し、2024年までに20万人以上の外国人専門人材を受け入れつつ社会的安定を保った。この事例は、適切な規制と保護策を備えた労働力輸入が、地域経済を補完し得ることを示している。
一方で、地元労働者の雇用転換や収入減少といった影響は現実のものとなっている。立法会議員の周小松氏が報告した200件の事例では、外国人労働者の流入後に正社員からパートへの切り替えが行われたとされる。労工及福利局の孫玉韓局長が「違反雇用主に容赦しない」と強調したが、実効性ある監督体制の強化は施政報告で明確にされなければならない。
飲食業界では30,000人規模の外国人労働者受け入れが承認される一方、香港餐飲聯業協会が「一時停止」を求めつつ延長署名を行うなど、矛盾した動きが見られる。デンマークの「ポジティブリスト制」に倣い、実際の労働市場データに基づいて外国人労働枠を調整する仕組みの導入が有効な対応となり得るだろう。
さらに、AIの進展は待ったなしの課題だ。マイクロソフトの調査では翻訳業務の98%がAIで代替可能とされ、著名研究者のジェフリー・ヒントン氏も「知識労働者より配管工の方が安定している」と警鐘を鳴らす。米国では学位を持つ若年層の42%がブルーカラー職を志すなど、労働観の変化も現れている。上海市が7,000億円規模の再教育基金を投じて「AIプラス」政策を推進しているように、香港も「AI転換基金」を設け、既存の研修補助を拡充すべきだとの声が強い。
制度の運用面でも改善余地は大きい。例えば、現行の「地元2人対非地元1人」の比率を企業単位ではなく職種ごとに適用する改革や、違反企業の恒久的排除といった措置が求められている。また、失業率が一定基準を超えた場合に自動的に外国人枠を縮小する「サンセット条項」を設ければ、景気変動に対応した柔軟な雇用政策が可能となる。
北部都會区開発や粤港澳大湾区との一体化も、労働市場再編の好機だ。深センとの共同プロジェクト「創新科技園区」が始動した今こそ、新たな雇用カテゴリーを創出し、香港を高付加価値サービスの中核都市へ進化させる戦略が必要である。
施政報告は単なる労働政策の更新ではなく、社会の安定と経済の持続性を担保する試金石となる。市民の不安を無視せず、同時に世界都市としての競争力を守るための明確なビジョンが示されるかどうかが、香港の将来を左右するだろう。














