香港特別行政区で8月21日、世界有数の会計士団体であるCPAオーストラリアが、2025年の政策演説に向けて香港政府へ一連の提案を提出した。提案は国際金融センターとしての地位強化や、イノベーション拠点の発展、ESGとグリーン経済の推進、経済の多角化、人材確保と育成といった五つの重点分野に及んでいる。CPAオーストラリア大中華圏部門の会長を務めるカリーナ・ウォン氏は、主要経済圏との貿易摩擦が続く中でも香港が持つ自由港としての強みや国際的なビジネス環境をさらに発揮する必要があると強調した。
具体的には、多国籍企業を対象にした「Qualified Refundable Tax Credit(QRTC)」の導入が提案されており、海運業や商品取引分野における投資を呼び込み、香港を国際的な貿易・物流の中心地としてさらに強化することを狙う。また、コモディティ取引に関する税制優遇の拡大や、低空経済の実証ゾーン設置など、経済を新たな領域へ広げる施策も含まれている。低空経済とは、ドローンや次世代航空モビリティを活用し物流や都市計画を変革する分野であり、香港は粤港澳大湾区との連携を通じて国際的人材を呼び込む余地が大きいとされる。
さらに、効率的な電子政府体制の構築も重視されている。CPAオーストラリア副会長のサイラス・チョン氏は、行政データを安全かつ利便性高く共有できる「ワンストップ型」の仕組みを法整備とともに整えるべきだと提案した。オンライン認証サービス「iAM Smart」を活用し、対面手続きの削減や各種サービスの統合を進めることで、企業や市民の利便性を高められると指摘している。
持続可能な発展に向けた取り組みとしては、国際基準に整合した「香港版タクソノミー」の整備や、カーボントレーディング制度の標準化、カーボン・コネクトの検討などが挙げられた。エネルギー政策を脱炭素経済への転換に直結させることが不可欠であり、低炭素エネルギーの役割を明確に位置づけることが求められている。
一方、香港の金融市場についても言及があった。CPAオーストラリアのケルビン・リョン副会長は、香港が2025年に再び世界最大のIPO市場に返り咲く可能性を指摘。家族オフィスや海外企業のデュアル上場を積極的に誘致し、「IPO Connect」といった新たな仕組みを探ることで資金調達拠点としての優位性を強化できると述べた。さらに、デジタル資産分野では「LEAP」枠組みを歓迎し、ステーブルコインの規制整備や現実資産のトークン化に向けた明確なロードマップの必要性を示している。
中小企業への支援策としては、サイバーセキュリティ補助金制度「CyberSafe SME Subsidy Programme」や「CyberSafe HK」認証の創設が提案された。また、先進国に並ぶ形での育児休暇制度拡充によって人材定着力を高める考えも打ち出された。
CPAオーストラリアは設立70周年を迎えた香港で、17万5,000人の会員を擁する国際的団体として、持続可能な経済成長を支える政策提言を継続している。今回の提案群は、香港が世界経済の変化と技術革新の波に対応し、競争力を維持・強化していく上で重要な指針となりそうだ。














