ベトナムと米国の通商関係が大きな転機を迎えています。2026年2月、米連邦最高裁判所が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づく関税賦課を違憲とした判決を受け、トランプ政権がベトナム等に課していた高率な「相互関税」の法的根拠が揺らぐ事態となりました。これを受け、ベトナムのトー・ラム書記長と米国の通商代表部(USTR)は、372億ドル規模の協力協定を締結。米国側はベトナム産エビへのアンチダンピング税を大幅に引き下げるなど、実質的な関税負担の軽減に向けた譲歩を見せています。
この歩み寄りの背景には、ベトナム側が実施した「対米譲歩案」があります。ベトナム政府は米国産の農産物や自動車に対する輸入関税を最大で半減させる措置を決定したほか、イーロン・マスク氏率いるスペースXの「スターリンク」導入を認めるなど、米国企業の市場アクセスを劇的に改善させました。米国にとっては、巨大な対ベトナム貿易赤字を解消するための「均衡ある貿易」の実現が至上命題となっており、ベトナムはこれに柔軟に応えることで、自国製品の対米輸出ルートを死守する戦略をとっています。
一方で、ベトナム国内ではデジタル経済への規制が強化されています。2026年より、海外のデジタルサービスプロバイダーに対する税務申告と納税義務の運用が厳格化され、GAFAなどのプラットフォーム企業だけでなく、クラウドサービスやeコマースを手掛ける外資企業も、ベトナム国内での収益に基づいた適切な納税が強く求められるようになりました。通商面での「関税引き下げ」という追い風と、国内規制の「透明性向上」という変化が同時に進むなか、ベトナムは東南アジアにおける最もダイナミックな投資先としての地位を盤石なものにしようとしています。














