香港、ニュー・スペース経済で国際サービス拠点を狙う

香港が、急成長する「ニュー・スペース(NewSpace)」経済の中で存在感を高めようとしている。目指すのは、衛星製造やロケット開発といったハード分野ではなく、金融、保険、法律、仲裁、データ処理といった専門サービス分野における国際ハブとしての地位の確立だ。香港政府トップの政策ユニットは先週、宇宙経済をテーマにしたハイレベルな円卓会議を開催し、中国本土および海外から学者、投資家、業界専門家を招いて、世界的な宇宙産業拡大の中で香港が果たし得る役割について議論を行った。

ニュー・スペースとは、低軌道と呼ばれる高度2000キロ以下の宇宙空間を舞台に、民間企業が参入する新しい宇宙産業を指す。人工衛星の製造や打ち上げ、宇宙法、宇宙観光など、商業色の強い分野が特徴で、近年急速に市場規模を拡大している。政策ユニットは、世界の宇宙経済が今後「爆発的な産業拡張」の局面に入る可能性があると指摘し、中国が2026年から2030年を対象とする第15次五カ年計画の中で「宇宙大国」としての地位確立を掲げていることが、香港にとって歴史的な機会になると強調した。

昨年の施政方針演説で、香港の行政長官ジョン・リー氏は宇宙分野を重点産業の一つとして挙げ、国際性、資金調達力、研究開発基盤といった香港の強みを生かせる分野だと述べている。政府はすでに「イノHK」プラットフォームの下で宇宙ロボティクス・エネルギーセンターを設立し、材料、エネルギー、通信、ロボット、データ処理など6件の航空宇宙研究プロジェクトに対し、総額1億香港ドルを拠出した。

世界経済フォーラムの2024年報告書によれば、世界の宇宙経済規模は2023年の約6300億米ドルから、2035年には1兆8000億米ドルへと拡大する見通しで、年平均成長率は9%に達するという。こうした中、2022年に設立された政策ユニットのトップであるスティーブン・ウォン氏は、中国の国家戦略が商業宇宙企業の国際展開を後押ししている点を挙げ、香港は受け身ではなく、戦略的機会を積極的につかむ必要があると語った。

ウォン氏は、国家レベルでの宇宙産業強化は単一産業の話ではなく、産業チェーン全体に関与できる好機だと指摘する。香港は基礎研究、専門サービス、国際金融、データガバナンスといった分野で貢献でき、これが地域経済に新たな成長エンジンをもたらす可能性があるという。政府系投資会社である香港投資公社も、ニュー・スペース関連投資や宇宙技術の商業化を後押しする方針を示した。

円卓会議には、法律専門家のアンソニー・ネオ氏、香港の宇宙系スタートアップ支援組織OASAのグレッグ・リー氏、政治家やIT業界の議員、地元大学の研究者らが参加した。ネオ氏は、成熟したコモンロー制度と国際金融センターとしての地位を持つ香港は、宇宙金融や仲裁、規制といった法務分野で大きな競争優位性があると述べている。

また、中国の民間ロケット企業ランドスペースの関係者は、再使用型ロケットの商業化と、国際産業チェーンにおける香港の役割について言及した。投資銀行関係者や企業家からは、新興宇宙産業に対する国際的な投資関心の高まりも示された。参加者の間では、香港がデータ処理や計算資源の強みを生かし、ニュー・スペース経済のデータハブとして機能できるとの見方で一致した。

一方で、低軌道に急増する宇宙ごみの問題も重要な論点として浮上した。宇宙ごみの監視、能動的除去技術、軌道上リサイクルといった分野は、香港にとって新たなビジネス機会になり得るという。実際、中国の宇宙ステーション「天宮」に滞在していた宇宙飛行士の帰還が、宇宙ごみによる衝突事故の影響で遅れた事例も紹介された。

香港大学の宇宙研究責任者であるクエンティン・パーカー教授は、宇宙ごみが連鎖的に増殖する「ケスラー・シンドローム」が世界的な脅威になっていると警鐘を鳴らし、中国はこの問題に極めて真剣に取り組んでいると述べた。その一方で、香港には宇宙政策を主導する明確な政府組織が存在せず、このままでは好機を逃しかねないと指摘する。専門家主導で透明性の高い宇宙関連オフィスを早急に設立すべきだとの声も上がり、対応の遅れに対する危機感が強まっている。

北京が宇宙分野で急速に動く中、香港に残された時間は決して多くない。ニュー・スペース経済への参画は、香港が次の成長モデルを描く上で試金石となりそうだ。

https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3340347/hong-kong-eyes-slice-booming-newspace-economy-professional-services-hub

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