かつて中国最大の不動産企業として世界に名を馳せた中国恒大集団(エバーグランデ)が、ついに香港証券取引所から上場廃止となる。15年以上にわたり取引されてきた株式は、巨額の負債に押し潰された同社の劇的な崩壊を象徴する結末を迎えた。最盛期には時価総額500億ドルを超え、中国の高度成長を体現していたが、2020年以降の規制強化を契機に経営は急速に悪化。2024年1月には香港高等法院が清算を命じ、その後の株式取引は停止状態にあった。
恒大の創業者である許家印(ホイ・カヤン)氏は、農村出身から一代で巨万の富を築き、2017年にはアジア一の富豪にまで上り詰めた。しかし栄華は長くは続かず、同年に推定450億ドルあった資産は現在10億ドルを割り込み、2024年には生涯にわたり中国資本市場からの追放処分を受けるなど失墜は決定的となった。清算人は債権者への返済のため、許氏個人の資産売却も視野に入れている。
恒大は最盛期、全国280都市で1300件以上の開発案件を抱え、電気自動車メーカーや中国有数のサッカークラブ「広州恒大」まで擁していた。しかし総額3,000億ドルに及ぶ負債は経営を圧迫し、資金繰りのため不動産を大幅割引で販売するも、ついには海外債務の返済に行き詰まり、経営破綻に至った。
この崩壊は中国経済全体にも深刻な影響を及ぼしている。中国経済の約3分の1を占め、地方政府の主要財源でもあった不動産市場は冷え込み、住宅価格は30%以上下落。家計の資産価値が大きく目減りしたことで消費意欲も低下し、雇用面では開発業者の大量解雇や給与削減が広がった。結果として中国経済の成長率は「5%前後」まで鈍化し、かつての二桁成長時代からは遠い姿となっている。
恒大の清算は終局的な局面を迎えており、残る焦点は債権者にいくら返済できるかという点に移っている。一方、同業の中国南城集団(China South City)も破産手続きに入り、碧桂園(カントリー・ガーデン)も140億ドル規模の海外債務削減を巡り交渉を続けているなど、不動産危機は恒大にとどまらず広がりを見せている。
中国政府は住宅購入支援や消費刺激策を打ち出し、緩やかな底打ちの兆しも見られるが、ゴールドマン・サックスは中国の住宅価格下落が2027年まで続くと予測しており、完全な回復には時間がかかるとの見方が強い。現在の中国政府は不動産ではなく、再生可能エネルギーや電気自動車、ロボティクスといった先端産業育成を優先しており、国家の発展戦略はすでに大きく転換しつつある。恒大の上場廃止は、一つの時代の終わりと新たな経済モデルへの過渡期を示す出来事といえるだろう。














