香港政府は、労働者の権利を守るはずの「労働組合法(改正案)」に大幅な改定を加え、労働組合の自由な活動を抑制する強硬な内容で制定しました。登録機関である労働組合登記官(Registrar of Trade Unions)に対し、捜査令状なしで組合事務所への立ち入りや書類押収、海外との関係を求める場合に事前の承認を義務付ける権限が与えられたのです。さらに、組合の登録は「国家安全保障」を名目に理由づけなく拒否でき、これに対する十分な不服申し立ての機会も与えられず、“国家安全保障違反”の有罪者は永久に組合の設立・指導に関与できなくなります。このような変更は労働組合の自主的な結成と運営に深刻な制約をもたらすものです。
背景には、香港内外で「ソフト・レジスタンス」(穏やかな抵抗)への対抗を狙う国家安全保障の名目で、独立した労働組合を解体・抑圧しようという意図があります。これまで登録済みの労働組合を当局が恣意的に閉鎖できる体制になり、労働者の団体交渉や結社の自由は著しく弱体化されると懸念されています。
この改正を受け、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)は声明を発表し、「曖昧な国家安全保障の名目で登録を拒否し、不服申し立ての機会を奪うことは法の支配を毀損し、草の根組織の結成を抑え、労働者の団体交渉力を削ぐものだ」と非難し、香港当局に対し憲法で保障された労働者の権利を尊重し、安全無く活動できる環境の確立を強く訴えています。
香港では2020年以降、中国共産党による統制強化の動きが顕著になっており、2021年には独立系最大組織の「香港労働組合同盟(HKCTU)」が解散に追い込まれました。当時、27以上の労働関連組織が安全保障法を理由に活動を停止しています。今回の改定は、それらの動きをさらに組織的に進めるもので、民主派労働運動にとって致命的な打撃となる可能性があります。
労働者の結社の自由は、香港基本法の第27条や国際人権法(ICCPR)によって保障された基本的権利です(たとえば「組合をつくり、加入し、ストライキを行う自由」など)。しかし今回の改正によって、政府の恣意的判断により自由な組合活動が事実上不可能になりつつあります。これは香港の自治性や社会的持続性にとって深刻な後退であり、今後の労働環境や市民活動における広範な影響が懸念されます。
今回の法改正が実施されたことで、香港の労働組合運動は重要な岐路に立たされました。政府が「国家安全保障」を口実にあらゆる組織の登録を制限できる制度を導入した今、もはや組織的な労働運動は難しくなっています。一方でIFJは、国際的連帯を通じて香港の組合を支援すると表明しており、今後も香港の労働者に対する注視と支援が不可欠です。
この法改正によって香港が国際的な労働基準や人権基準から大きく乖離する可能性が高まり、今後の貿易関係や国際資本の受け入れにも影響を及ぼすことが予想されます。香港の「一国二制度」は、現状のままでは理念としてではなく名ばかりとなる危険があるでしょう。今後、国際社会がどのように対応し、香港市民がどう抵抗し、再び結社の自由を取り戻していくかが問われています。














