国務院は12月1日より、深セン市民が香港を何度も訪れることができる「一簽多行(マルチビザ)」を再開することを批准しました。この措置により、深センの戸籍を持つ人だけでなく、持たない人も対象となり、約1000万人が新たに対象に加わります。この動きは、低迷する香港経済の回復に期待が寄せられています。
経済回復の背景
現在、中国本土と香港の景気は振るわず、中国政府は人の往来を活発化させることで景気回復を図ろうとしています。例えば、11月30日には日本人が中国を訪れる際の短期滞在ビザの免除措置が再開され、2024年1月1日からは珠海の戸籍保有者によるマカオ渡航ビザが導入される予定です。このようなビザ制度の見直しは、中国全土で進められています。
マルチビザ再開の経緯
2009年に実施された深セン市民向けのマルチビザは、並行輸入問題や受け入れ能力の限界により、2015年には「一周一行」という制限付きビザに変更されました。しかし、コロナ禍以降、香港を訪れる中国本土の観光客は減少しており、2018年の約53.4%に相当する2400万人が未だ戻ってきていません。
さらに、香港市民が深センで消費を行う「北上消費」が進行し、香港の内需不足を悪化させました。特に小売業や飲食業が打撃を受け、多くの店舗や映画館が閉鎖に追い込まれています。これを打開するため、李家超行政長官は今年の施政方針演説で、マルチビザ再開を中国政府に提案し、今回の措置に至りました。
再開後の期待と課題
新たな制度により、深セン市民の1回の香港滞在期間は最大7日間となります。また、週1回のビザ申請は中止されるものの、有効期限内のビザはそのまま利用可能です。香港政府の試算では、平日平均3万人、週末・祝日で8~10万人の来港者数が倍増すると見込まれています。
飲食業界では、12月の売り上げが2023年の100億香港ドルから120億香港ドルまで回復する可能性があると期待されています。ただし、香港餐飲聯業協会の黄家和会長は「茶餐庁」のような特徴的なレストランの売り上げが伸びる一方で、中華料理店の競争力には課題が残ると指摘しています。
小売業についても、外国製品を扱う店舗が深セン市民を引きつけると期待されていますが、深センにもあるような店や特徴のない店は、売り上げ増加の見通しが不透明とされています。一方、並行輸入問題の再発はないと予測されています。
今後の見通し
「北上消費」の継続が予想される一方で、深セン市民による「南下消費」がどの程度進むのか注目されています。特にクリスマス商戦を契機に、香港経済が回復基調に乗るかが焦点となります。














