2025年、ベトナムの観光業がかつてない勢いで回復している。国家統計総局によると、2025年1月から9月までに同国を訪れた外国人観光客は延べ1,540万人を超え、前年同期比で21.5%増加した。特に注目すべきは、欧州からの訪問者が前年より約35%も増えたことだ。背景には、今年8月から施行された新たなビザ免除政策がある。
9月単月の外国人訪問者数は150万人で、8月比では9.6%減少したものの、前年同月比では19.5%の増加を記録。観光業全体では堅調な回復基調を維持している。
この成長を支えているのは、ビザ政策の柔軟化、積極的な観光プロモーション、そして国の祝祭日に合わせた文化イベントの数々だ。とりわけ欧州市場の伸びが際立ち、今年1〜9月にかけて約191万人の欧州観光客がベトナムを訪れた。前年から34.9%の大幅増となり、第三四半期だけでも前期比38%、前年同期比では実に60.1%の増加という驚異的な伸びを示した。
細かく見ると、ロシアからの観光客は245%増、ポーランド55%増、オランダ35.1%増、スイス32.9%増、チェコ32.6%増、フランス32.3%増、ベルギー30.6%増、イギリス29.2%増、ドイツ23.9%増と、ほぼすべての主要国で上昇傾向にある。中でも、8月15日からビザ免除の対象となったベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、オランダ、ポーランド、スイスなどの国々では、滞在期間が45日まで延長され、観光需要を一気に押し上げた。
一方で、アジアは依然として最大の市場であり、1〜9月の訪問者数は1,224万人(前年比20.9%増)。オセアニアからは44.5万人(13.7%増)、アメリカ大陸からは80万人(8.5%増)と、すべての地域で堅調な伸びを見せている。
政府によるマーケティング支援や国際プロモーションも奏功し、ベトナムのブランド力は着実に高まっている。政府は「2025年に外国人観光客2,500万人」という目標を掲げており、年末までにさらに960万人を呼び込む必要がある計算だ。
高級旅行会社「ラックス・グループ」のファム・ハー会長は、「ビザ免除の拡大や航空券・宿泊のインセンティブ制度が重要」と指摘する。「インドや中国など巨大市場を開拓するためには、旅行者にとって魅力的な特典を用意することが突破口になる」と述べた。
また、彼は「仮に2,500万人の目標に届かなくても、観光収入が30%増えれば業界としては成功だ」と強調。特に富裕層を狙った戦略的な商品開発とマーケティングが必要だとし、「ラグジュアリー層は全体の約5%、ハイエンド層は約10%。こうした層に合わせた体験価値を提供できれば、旅行者は最後の1ドルまで使って帰国するだろう」と語った。
観光庁のハー・ヴァン・シウ副局長も、デジタル化の加速やオンライン販売の強化、航空会社との連携による直行便・チャーター便の拡充を呼びかけている。今後はインド、ロシア、オーストラリア、米国など新興市場からの誘致にも注力する方針だ。
観光が再び国の成長エンジンとなりつつあるベトナム。ビザ政策の柔軟化とグローバル戦略の進化が、同国を「アジアで最も開かれた観光立国」へと押し上げようとしている。














