米ハーバード大学ケネディスクールのグロースラボが発表した最新の「アトラス・オブ・エコノミック・コンプレキシティ(経済複雑性アトラス)」によると、今後10年の世界経済成長をけん引する中心的存在としてベトナムと中国が浮上している。2024年データに基づく今回の予測では、高度で多様な製造能力を持つ国々が、将来の成長を主導する可能性が高いと分析されている。特に、輸出構造の複雑さと生産能力の蓄積が、所得水準を超える成長ポテンシャルを生み出している点が強調された。
予測によれば、1人当たりGDP成長率で世界トップに立つのはベトナムで、中国がそれに続く見通しだ。世界第2位の経済規模を持つ中国が依然として高成長を維持するという見立ては注目に値する。グロースラボの責任者であり経済複雑性アトラスの主要研究者であるリカルド・ハウスマン氏は、両国が現在の所得水準に比べて高い経済複雑性を有している点を指摘し、それが今後の持続的成長を支える基盤になると述べている。経済の多角化と高度化が進んだ国ほど、次の成長局面で優位に立つというのが今回の核心的メッセージだ。
経済複雑性指数(ECI)は、各国の輸出品目の多様性と高度さを測定する指標であり、単なる輸出額やGDP規模とは異なり、その国が持つ知識や技術の蓄積を反映する。研究では、この指数が現在の所得水準の違いを説明するだけでなく、将来の成長率も高い精度で予測できることが示されている。つまり、今は中所得水準にあっても、複雑な製造能力を持つ国は、今後急速に豊かになる可能性があるということだ。
成長は地域的にも偏在する見通しで、東アジア、中央アジア、東アフリカの3つが主要な成長極になると予測されている。東アジアではベトナムと中国を筆頭に、タイ、ラオス、インドネシア、マレーシア、インドなどが高い成長ポテンシャルを持つとされる。中央アジアやバルト諸国でも、アルメニア、ジョージア、ウズベキスタン、リトアニア、ラトビアなどが1人当たりベースで上位に入る見通しだ。これらの国々もまた、産業構造の高度化を進めてきた点が評価されている。
一方で、報告書はリスク要因にも言及している。近年強まる貿易摩擦や地政学的緊張は、サプライチェーンの再編や投資の停滞を招きかねず、成長シナリオに影響を与える可能性がある。それでもなお、複雑で多様な生産基盤を持つ経済は、外部ショックに対して比較的強い回復力を持つと分析されている。
今回の予測は、単に経済規模の大きさではなく、どれだけ高度な製品を多様に生み出せるかという「質」が今後の成長を決めるという視点を改めて示した。ベトナムや中国の台頭は、製造業の高度化と産業多角化の成果を象徴するものであり、世界経済の重心が引き続きアジアに置かれる可能性を強く示唆している。今後10年、経済複雑性を高められるかどうかが各国の成長格差を左右する鍵となりそうだ。














