イギリスで初めての就職を目指す若者たちが、新型コロナ禍以来最も厳しい雇用環境に直面している。背景には、労働党政権による260億ポンド規模の給与税引き上げと新たな最低賃金の導入があり、企業が採用活動を一時停止する動きが広がっていることがある。さらにAIの普及も重なり、若年層の雇用機会は大きく揺さぶられている。
求人検索サイト「Adzuna」のデータによれば、2025年7月時点で卒業生向けの職や学徒制度、学歴不要のジュニア職の求人件数は前月比4.5%減の約21万件弱となった。新卒や若者向けの求人は全体のわずか20%にとどまり、2022年から2024年にかけての平均27%を大きく下回る水準で、2020年10月以来の低さだ。当時はパンデミックによる経済制限下で同様の採用難が見られた。
特に影響を受けているのは、社会に出て初めて職を探す若者たちである。彼らは採用凍結に対して最も脆弱な層であり、2025年6月までの3カ月間の若年失業率は14.1%に達した。これは新型コロナ以前と比べ2ポイント上昇している。給与税の増税と最低賃金引き上げを吸収しようとする企業が人件費を抑制していることが、採用抑制につながっている。
さらに注目されるのは、AIの導入が採用動向を変えている点だ。従来、AIが得意とする文書処理やプレゼン資料作成といった業務を担ってきた卒業生向け職種は、過去1年間で28%減少し、エントリーレベルの職種の減少率の約4倍にあたる。Adzunaの共同創業者アンドリュー・ハンター氏も「採用意欲は明らかに偏っている」と指摘する。
全体の求人数は7月に86万5,000件近くまで減少し、前月比で1.2%の落ち込みを示した。医療分野の求人減少やエントリーレベル採用の停滞が重荷となる一方で、建設業の求人は二桁の伸びを見せるなど、業種によって動向に差が出ている。また、企業は正社員の採用を抑え、パートタイムや契約社員の比重を高める傾向を強めており、4月以降の給与税増税と最低賃金改定を受けて契約社員の求人は22%増加したのに対し、正社員求人は9%減少した。
イギリス経済は、ポストパンデミック後のインフレの長期化に加え、雇用市場においても大きな課題を抱えている。若者の就職難は労働力の将来的な供給に影響を及ぼす懸念があり、AIの普及による雇用構造の変化と相まって、労働市場の二極化が進む可能性がある。今後は政府の雇用政策や教育・研修制度の強化が重要な課題となりそうだ。














