英国の国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナルUK」は、海外領土における法人実質所有者(ベネフィシャルオーナー)登録制度の実態を詳細に評価した新たな報告書を発表した。今回明らかになったのは、主要なオフショア金融センターの多くが、約7年前に公約した企業透明性の強化をほとんど実行できていないという厳しい現状だ。
今回の報告書「Opening-Up Offshore Secrecy」は、バミューダ、英領ヴァージン諸島(BVI)、ケイマン諸島、モントセラトを対象に、実質所有者登録制度の枠組みの質と、レジスターへのアクセス可能性という2つの観点から92項目の評価基準をもとに採点した。その結果、モントセラトのみが両部門で最高評価の「A」を取得した一方、BVIとバミューダはアクセス性で最低評価の「F」にとどまるなど、透明化への取り組みが大きく遅れていることが浮き彫りになった。
この評価は、今年公開された「透明性確保のための実務指針(ブループリント)」に基づき、企業の最終所有者を明らかにするために必要な要件を明確化したものだ。しかし、多くの海外領土は、当初約束した「全面的な公開型レジスター」ではなく、EU方式の「正当な利害関係者に限るアクセスモデル」を採用している。理論上はこの方式でも高評価を獲得できるが、実際にはEUガイドラインの解釈を狭め、利害関係者へのアクセスを極端に制限しているため、スコアは大きく下落している。
トランスペアレンシー・インターナショナルUKの上級政策・調査マネージャーであるマルゴ・モラット氏は、「約束の裏側で、実際はほとんど何も変わっていない。ケイマン、BVI、バミューダの企業レジストリは依然として閉ざされたままで、過去の会議での公約を守る姿勢は見られない」と厳しく指摘する。さらに、利害関係者モデルに移行したとしても、本気で透明性向上に向き合わなければ、改革の後退を正当化する口実に過ぎないと強調した。
特に問題視されているのは、BVIにおける「捜査対象に警告が届く恐れのあるティッピングオフ規定」、個別申請が必要なアクセス手続き、トラスト構造を背景にした不完全なデータ、会社名を事前に知っていなければ検索できない仕様、そしてバミューダでの2026年以降へと及ぶ長期的な遅延などである。
一方、モントセラト、ジブラルタル、セントヘレナの3地域だけが完全公開型レジスターを実現しており、最も費用対効果が高く、かつ質の高い透明性を確保する手法として評価されている。
また、同報告書では、1MDB事件、プライベートバンクの資金流用、グレンコアのパラダイス・ペーパーに関連する事例など、オフショア秘密主義が巨大な汚職をいかに助長してきたかを示すケーススタディも提示。公的資金が失われることで学校、住宅、医療など世界中のコミュニティが深刻な影響を受けている実態を訴えている。
透明性強化の約束から7年以上が経過したにもかかわらず、依然として大半の海外領土は改革を実現できていない。今回の評価は、企業透明性の欠如がもたらすリスクと、その改善の緊急性を改めて浮き彫りにしている。














