レバノンとキプロスが海上境界に関する新たな合意に署名し、両国の排他的経済水域(EEZ)を正式に区分する道筋が開かれた。東地中海の海洋資源をめぐる緊張と協調が入り混じる中で、この合意は地域の経済活動を活性化させる可能性を秘めている。両国は約20年前にもEEZの境界を定める取り決めを交わしていたが、当時はイスラエルとの海域問題が未解決だったため、レバノン議会による批准には至らなかった。その後2022年にレバノンがイスラエルと海上境界合意を結んだことで、今回の交渉がようやく前進した形となる。
署名式に出席したレバノンのジョセフ・アウン大統領は、キプロスのニコス・クリストドゥリディス大統領とともに合意の意義を強調し、「両国の排他的経済水域を正式に区分できたことを祝いたい」と述べた。EEZとは、沿岸国が漁業や資源開発などの経済活動に対して排他的な権利を持つ海域であり、海底資源が期待される東地中海においては特に重要な意味を持つ。今回の合意により、両国間ではエネルギー探査や海上経済活動を進めるための法的な基盤が整うことになる。
しかし、レバノンのEEZ全体が確定したわけではない。依然としてシリアとの間で海の境界が定義されておらず、レバノンはキプロスとの海域区分を完全な形で確定するためにシリアとの協議が不可欠だ。アウン大統領は署名後、「協力したいすべての相手に対して、海上の理解を完成させるための正直で明確な招待を送る」と述べたものの、シリアを名指しすることは避けた。レバノンとシリアは昨年のアサド政権崩壊後、関係改善に向けた動きを強めており、今後の交渉の行方が注目される。
今回の合意は、長く曖昧だった海域問題にひとつの区切りをつける一方で、地域全体の海洋資源開発や外交関係にも影響を与える可能性がある。東地中海は近年、エネルギー探査をめぐる各国の利害が交錯し続けており、明確な海上境界の設定は商業活動の安定に直結する。レバノンにとっては経済危機からの脱却を目指す上でも、海洋資源の開発は不可欠な戦略のひとつだ。今後、シリアとの協議が進展しEEZが完全に確定すれば、レバノンはより積極的に海洋資源の活用に踏み出すことができるだろう。今回の合意がその大きな一歩になることは間違いない。














