シンガポールの経済は2025年第3四半期に2.9%成長し、エコノミストが予測していた2.0%を上回った。貿易産業省(MTI)が10月14日に発表した速報値によると、これは前期(第2四半期)の改定後成長率4.5%を下回るものの、依然として安定した拡大ペースを維持している。季節調整済みの前期比では1.3%の成長となり、第2四半期の1.5%からわずかに減速した。
MTIは、四半期ごとの速報値は主に最初の2カ月間のデータに基づいており、今後修正される可能性があると説明している。今年8月には、シンガポール経済が予想を上回る回復を見せたことから、通年の成長見通しを従来の0〜2%から1.5〜2.5%へと上方修正していた。
経済の持ち直しに対しては、世界的な不透明感が続く中でも輸出と製造業の底堅さが支えとなったとみられる。特に、米国の関税政策による影響は懸念されていたほど深刻ではないようだ。OCBC銀行のチーフエコノミスト、セリーナ・リン氏は、「トランプ大統領の大規模な関税措置による逆風は想定よりも軽微で、4月の“リベレーション・デー”以降はやや落ち着きを見せている」と述べた。
シンガポールは、小規模で開放的な経済構造ゆえに、外部環境の変化に敏感である一方、デジタル化やグリーン投資などの分野で新たな成長基盤を築いている。今後は世界経済の減速懸念が残る中でも、ASEAN域内貿易や先端製造業の拡大を通じて安定した成長を維持できるかが注目される。