日本の金融市場に漂う不安感が、改めて大手銀行関係者の言葉によって浮き彫りになっている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)でグローバルマーケット部門を率いる関宏幸氏は、現在の日本が抱える“負の連鎖”リスクに市場が敏感になっていると語った。金融緩和の収束が物価上昇に追い付かず、さらに円安が進むことで輸入コストが押し上げられ、再び物価を押し上げるという悪循環の懸念が高まっているという。
市場では、日本銀行が「今月利上げに踏み切る確率は90%」と織り込んでおり、焦点は次の一手、その先の政策の方向性に移っている。しかし、関氏は「次の一回で終わり」と市場が受け取るようなメッセージを日銀が発すれば、円安圧力が再び強まる可能性があると指摘する。政府がインフレに不満を抱く国民への配慮から財政支出を増やすような状況になれば、円安に拍車が掛かり、輸入価格の上昇が再びインフレを加速させる“負のスパイラル”が現実味を帯びるという。
現在、米国との金利差が縮小しているにもかかわらず、円相場は1ドル=155円前後と依然として弱含み。これは、高市早苗首相のリフレ志向が市場に意識され、「大幅な追加利上げは見込みにくい」との見方が根強いためでもある。関氏は、日本の実質金利が極端に低い状態を改善しなければ、こうした流れを止めることはできないと強調する。
彼が示したのは、早期かつ着実な利上げによる「正常化ロードマップ」だ。今月に利上げが決まった場合でも終わりではなく、半年に1回のペースで0.25%ずつ金利を引き上げる姿勢を政策当局が明確にするべきだという。物価が日銀の見通し通りに推移する前提では、最終的に2027年半ばまでに1.25〜1.5%がターミナルレートになると見ている。もっとも、インフレが粘着的であれば、さらに高い金利が必要になる可能性も指摘した。
日銀が推計する日本の名目中立金利は1〜2.5%の範囲にあるとされ、関氏の見立てもその中に収まる。一方で国債市場については、10年債利回りが1.65%を超えた辺りからMUFGは慎重に買い戻しを進めており、もし2%を上回るような局面があれば、買い戻しをさらに加速させる方針だという。いまはリスクを抑えた運用態勢にあるだけに、購入余力も十分にあると明かした。
今回の発言は、為替や債券など日本市場を動かす要素が複雑に絡み合う中、日銀の一挙手一投足が市場心理に強く影響する状況を物語っている。金融正常化の道筋が明確に示されるのか、それとも不透明感が残るのか。年末に向け、円相場と政策金利の行方に注がれる視線は一段と鋭さを増しそうだ。














