アジア市場における存在感を年々高めているベトナムに関して、最新のビジネス環境を体系的にまとめた新しい実務ガイドが公開された。**「An Introduction to Doing Business in Vietnam 2026」**は、Vietnam Briefingが発行し、Dezan Shira & Associatesの支援を受けて制作された最新刊であり、現在Asia Briefing Publication Storeを通じて無料でダウンロードできる。本書は、2026年に向けて大きな転換期を迎えるベトナム経済と政策環境を理解するための包括的な入門書として位置づけられている。
ベトナムは今、単なる製造拠点から脱却し、高付加価値かつイノベーション主導型の成長モデルへと舵を切る重要な局面にある。2026年を見据えた政府の経済戦略では、世界経済が不透明感を抱える中でも、グローバル・バリューチェーンにおける自国の地位をより強固なものにするため、政策体系そのものの再構築が進められている。こうした背景のもと、政府は2026年に向けてGDP成長率10%という非常に意欲的な目標を掲げ、インフレ率を約4.5%に抑えつつ、一人当たりGDPを5,400〜5,500米ドルに引き上げる計画を明確にしている。
これらの数値目標を現実のものとするため、国家計画ではハイテク産業や戦略産業を中核に据え、デジタルインフラの整備、再生可能エネルギー、クリーンテクノロジー分野のエコシステム拡大を重点的に推進している点が特徴的だ。とりわけデジタル経済分野への期待は大きく、2030年までにベトナムを東南アジア第2位のEC市場へと成長させるという長期ビジョンも示されている。これは国内消費市場の拡大だけでなく、越境ECやデジタルサービス分野における外資企業の参入機会が今後さらに広がることを意味している。
こうした成長戦略を下支えするため、政府は民間セクターの活力を引き出す包括的なインセンティブ政策も打ち出している。中小企業向けの資金調達環境の改善、外資企業を含む投資家にとって予見可能性の高い制度設計、透明性を重視したビジネス環境の整備などが並行して進められており、単なる数値目標にとどまらない構造改革が意識されている点は注目に値する。
今回発行された2026年版「An Introduction to Doing Business in Vietnam」は、こうした政策転換を踏まえ、ベトナム市場への参入や事業展開を検討する企業に向けて、実務的かつ網羅的な情報を提供している。市場参入時に求められる各種要件、知的財産権の保護に関する注意点、最新の税制動向、人事・労務および給与管理に関する規制まで幅広く解説されており、ベトナムで責任ある持続的な事業運営を行うための基礎知識を一冊で把握できる構成となっている。
世界的に投資環境の選別が進む中で、ベトナムは成長性と安定性の両立を目指す市場として、引き続き国際的な注目を集めている。本書は、そうしたベトナムの現在地と将来像を冷静に見極めるための指針となる資料であり、2026年以降のアジア戦略を考える企業にとって、有益な一冊となるだろう。














