中国不動産大手の中国万科(チャイナ・バンケ)を巡る債務問題が、海外債権者にとって極めて厳しい局面に入っている。英金融大手バークレイズは最新の分析で、最悪のケースではオフショア債保有者が事実上ほぼ全額を失う可能性があると指摘し、中国本土の不動産セクターが抱えるリスクの深刻さを改めて浮き彫りにした。
バークレイズによると、比較的穏健な前提に基づくベースシナリオでも、債権者が回収できるのは元本の約10.1%にとどまる見通しだ。これは、すでに市場で大きく値崩れしている債券価格が示す水準の、さらに半分程度に過ぎない。一方で、オンショア資産の売却額が想定を下回り、グループ内取引を相殺した場合を想定する最悪シナリオでは、回収率はわずか0.9%まで低下するとしている。仮に銀行などが海外債権者より優先的に返済を受ける構造となれば、残る資産では意味のある回収は期待できないという。
この試算は、万科の米ドル建て債を発行している香港子会社「Vanke Real Estate Hong Kong」の2024年財務データを基に算出された。最終的な結果は、海外債権者が中国本土の資産にどこまでアクセスし、権利を実行できるか、また再編時の債権順位がどう整理されるかに大きく左右されるとバークレイズは分析している。
こうした見通しは、市場価格が示す水準よりもさらに悲観的だ。万科の2027年償還の米ドル債は額面1ドル当たり約20セント、2029年債も19セント前後で取引されており、すでに投資家心理は大きく冷え込んでいる。
かつて中国最大の不動産開発会社とされた万科は、先月、オンショア債2本について償還猶予を認められ、デフォルトは回避したものの、元本返済の先送り案は債権者に拒否された。また、深セン市の国有資産監督管理委員会の調整のもと、国内金融機関が9月までの利払い猶予に同意したとも報じられている。
比較的財務が健全とみられてきた万科の苦境は、中国不動産市場が長期低迷から抜け出せていない現実を象徴している。中央政府や地方政府は、住宅ローン金利の引き下げや住宅購入補助など数百に及ぶ対策を打ち出してきたが、下落基調を止めるには至っていない。北京や上海といった主要都市では、価格抑制のための規制が相次いで緩和され、昨年末には住宅転売にかかる付加価値税の減免措置も発表された。共産党の理論誌「求是」も年初に、不動産市場安定化に向けた総力対応を呼びかけている。
万科の問題は、他の不動産企業にも波及しつつある。国有系で比較的財務基盤の強い企業でさえ、市場全体への影響を認めざるを得ない状況だ。国有デベロッパーの華僑城集団は、万科の混乱が今年の市場心理を冷やしているとしつつも、政府支援を背景に自社の債務履行能力には自信を示したと伝えられている。中国不動産市場の調整局面は、今後もしばらく続く可能性が高く、海外投資家にとっては厳しい選別の時代が続きそうだ。














