シンガポール国立大学(NUS)のエネルギー研究機関であるエネルギー・スタディーズ・インスティテュート(ESI)は、グローバル戦略コンサルティング企業FutureScaleXと共同で、新たな政策ブリーフを発表した。タイトルは「トランプ政権がCCSに与える影響:政策変化とアジアのチャンス」で、米国における炭素回収・貯留(CCS)政策の後退が世界的な脱炭素の流れにどのような影響を及ぼし、特にアジアにどのような新たな機会をもたらすかを分析している。
ブリーフによれば、トランプ政権2期目での気候政策の転換は、米国のCCSプロジェクトの勢いを大きく削ぐ結果となっている。大統領令14154や45Q税額控除の撤廃提案により、米国内の75件以上のCCSプロジェクトが見直しや延期の対象となり、投資判断が難航しているという。さらに、鋼材やセメントなどCCS施設建設に不可欠な素材に対する輸入関税の引き上げがコスト上昇を招き、米国でのプロジェクト採算性を一層悪化させている。
一方で、アジアはこの変化を追い風に、世界のCCS分野での存在感を高めている。報告書は、2024年時点で世界のCCS特許の74%がアジアに集中しており、中国、韓国、日本を中心に研究開発と商用化の加速が進んでいることを指摘する。特に、安定した長期政策と域内での協力体制が、アジアにおける低炭素産業育成を支えている。
ESIの研究員シタ・ラフマニ博士は、「他地域の政策が揺らぐ中でも、アジアの低炭素産業への取り組みは揺るがない。地域間での協力と長期的視点の政策が、アジアを世界的な炭素管理の中心に押し上げるだろう」と述べた。また、FutureScaleXのケビン・パン氏も「米国が政策支援を後退させれば、アジアは単に空白を埋めるだけでなく、さらに加速する」と強調している。
今回の政策ブリーフは、米国での政策後退がグローバルな脱炭素の勢力図を塗り替え、アジアの戦略的重要性を一段と高める可能性を示唆している。今後もアジアが一貫した政策支援と技術革新を続ける限り、CCS分野における国際的リーダーシップを握る動きはさらに鮮明になりそうだ。














