カリブ海の小島アンギラ、「.ai」ドメインで数十億円の収入

1980年代、インターネットがまだ黎明期にあった頃、各国や地域に固有のドメインが割り当てられた。アメリカなら「.us」、イギリスなら「.uk」といった具合だ。小さなカリブ海の島アンギラには「.ai」が与えられた。当時は誰も気づかなかったが、これが数十年後に島の財政を大きく潤す“宝くじ”のような存在となる。

「.ai」という文字列は、人工知能(AI)の爆発的な発展に伴い、世界中のテクノロジー企業や個人にとって人気のドメインとなった。米ソフトウェア企業HubSpotの共同創業者ダーメッシュ・シャー氏は、you.aiというドメインを約70万ドル(約1億円強)で購入したと報じられている。AI関連サービスのブランド価値を高めるため、多くの企業が続々と.aiを取得しているのだ。

統計によると、過去5年間で.aiの登録件数は10倍以上に増加し、2024年だけでも倍増した。現在、登録数は85万件を超え、今後さらに増加が見込まれている。アンギラ政府は2024年に.aiドメインから約1億550万東カリブドル(約39億円)の収入を得ており、これは歳入全体の23%に相当する。観光業が37%を占める主力産業である一方で、ハリケーンなど自然災害に脆弱な観光依存経済を補完する存在として、ドメイン収入は極めて重要になっている。

英国海外領土であるアンギラは自治権を持つが、安全保障や災害時の支援では英国の関与も大きい。2017年のハリケーン・イルマ被害後には英国から約60億円の支援を受けた。その一方で、ドメイン収入は島の財政的自立を後押しする新たな柱となりつつある。2024年には米国の企業アイデンティティ・デジタルと5年間の契約を結び、.aiの管理をグローバルサーバーに移すことで、災害時にも収益が途絶えない仕組みを整えた。

登録費用はおおむね150~200ドル、2年ごとに更新料も同額程度かかる。さらに注目度の高いドメインはオークションで数十万ドル以上で取引され、その利益もアンギラの収入に直結する。you.aiに続き、cloud.aiが60万ドル、law.aiが35万ドルで落札されるなど、相場は高騰を続けている。

太平洋の島国ツバルが「.tv」ドメインを固定契約で貸し出した例と異なり、アンギラは収益分配方式を採用しており、収入増加に柔軟に対応できる体制だ。この資金は新空港の建設や医療・公共インフラ整備に充てられる計画で、島の未来を支える基盤となることが期待されている。

観光とITの二本柱で経済を支えるアンギラ。AIブームが続く限り、.aiは世界中の企業が欲しがる“プレミアムアドレス”であり続けるだろう。島民たちは、この幸運を一過性の収入に終わらせず、持続可能な成長へとつなげられるかが問われている。

https://www.bbc.com/news/articles/cn5xdp427veo