ベトナム政府は2025年9月9日、暗号資産取引所に関する初の正式なライセンス制度を定めた「決議第05/2025/NQ-CP」(以下、決議5)を公布しました。これにより、暗号資産取引サービスを提供する企業は、厳格な資本要件や所有構造、コンプライアンス基準を満たすことを条件に、5年間のパイロット枠組みの中で運営することが義務付けられます。
この動きは、同年6月に成立した「デジタル技術産業法」に基づくもので、同法は暗号資産を民法上の正当な財産として認め、所有・譲渡・相続の対象とすることを明文化しました。今回の決議は、この法的認知を具体的な市場監督の枠組みに落とし込み、暗号資産を未規制の領域から正式な規制下に移行させる大きな一歩となります。
ライセンス制度の監督は財務省(MOF)が主導し、国家証券委員会(SSC)、ベトナム国家銀行(SBV)、公安省(MPS)が協力する形で行われます。取引所を運営するための申請は、まずSSCへの基本書類提出から始まり、財務省による審査を経て、資本・所有構造・セキュリティ評価などを含む追加書類を12か月以内に提出する必要があります。その後、関連当局による総合的な審査を経て、条件を満たした企業にライセンスが発行されます。
主な要件としては、最低資本金1兆ドン(約3億7,800万米ドル)、外国資本比率の上限49%、機関投資家による65%以上の出資、最高水準のサイバーセキュリティ認証(レベル4)取得などが挙げられます。また、取引はすべてベトナムドン建てで行うことが義務付けられています。
今回の制度は、投資家保護とマネーロンダリング対策を強化しつつ、暗号資産市場の秩序ある発展を促すことを目的としています。さらに国際的な金融監督基準であるFATF(金融活動作業部会)の指針に沿うことで、ベトナムが「FATFグレーリスト」から脱却する狙いも込められています。
ベトナムは中国の全面禁止や米国の分断的な規制対応とは異なり、厳格な参入基準を課しながらも明確な法的枠組みを提示することで、東南アジアにおける暗号資産市場の新たな拠点となる可能性を秘めています。一方で、高額な資本要件により中小のイノベーターが排除される懸念や、暗号資産の利用範囲拡大に関する未解決の課題も残されています。
それでも、暗号資産を正式に「財産」と認めたうえで法制度を整備したことは、ベトナムがデジタル経済を推進し、国際金融市場との信頼を高める重要な転機となるでしょう。今後5年間の試行期間における運用結果が、同国の暗号資産政策の方向性を大きく左右することになりそうです。














