セーシェルで今週末に行われる大統領選挙と国会選挙を前に、人口わずか12万人の島国の行方を左右しかねない焦点となっているのが「アサンプション島」です。観光地としてはほとんど魅力のない乾燥した小島ですが、その地政学的な重要性と生態系保護をめぐる問題が、政治対立と国民感情を大きく揺さぶっています。
アサンプション島は、観光の中心地マヘ島から約1,140km離れた場所にあり、シルクロードと呼ばれる重要な海上交易路の近くに位置しています。過去にはインドが軍事基地建設を試みましたが、国民の強い反発で阻止されました。現在はカタール王室がリゾート開発に着手しており、70年のリース契約と2,000万ドルの前払い金で高級ヴィラや滑走路の建設が進んでいます。ところが、その工事が世界遺産アルダブラ環礁(アサンプション島からわずか27km)への深刻な影響を及ぼす可能性があると環境団体が警鐘を鳴らしています。
工事現場では、リクガメの甲羅が重機に潰されるなどの被害が報告され、国内の計画当局による工事停止命令も無視されている状況です。環境団体は裁判所に開発差し止めを求め、国際的な監視を導入すべきだと訴えています。
こうした問題は、大統領ワベル・ラムカラワン氏の政権に重くのしかかっています。同氏は5年前、汚職撲滅を掲げて政権を奪取しましたが、今回のリース契約については「投資なしに小国は生き残れない」と正当化。しかし、野党候補であるパトリック・ヘルミニー氏は「国民は貧しくなっており、政府の数字は信じられない」と批判し、社会保障拡充や福祉政策を公約に掲げています。
さらに、独立系候補のラルフ・ヴォルセール氏は「政府はあらゆる分野で腐敗している」と糾弾し、大麻の合法化による麻薬問題解決を提案するなど、異色の主張で存在感を示しています。
アサンプション島をめぐる環境保護か経済投資かという選択は、セーシェルの未来を大きく分ける分水嶺となりそうです。数字の上では経済が回復しても、国民の心を動かすのは「自然を守れるのか」という問いかもしれません。選挙結果は、国際社会の環境保護への期待と、セーシェル自身の国家存続戦略とのせめぎ合いを映し出すことになりそうです。














