ベトナムのファム・ミン・チン首相は12月20日、国家デジタル経済・デジタル社会発展フォーラムで演説し、同国のデジタル経済が力強い成長を遂げ、新たな経済成長エンジンとして存在感を高めていると強調した。フォーラムは全国34の省・市とオンラインで接続され、政府関係者や専門家が一堂に会し、ベトナムのデジタル化の現状と課題、そして今後の戦略について幅広く議論が行われた。
首相は冒頭で、これまでの成果を評価しつつも、制度面や人材、インフラ整備における課題が依然として残っていることを率直に指摘した。その上で、今後のデジタル国家建設を加速させるための行動指針として「5つの先駆(5 Pioneers)」「5つの実現(5 Presences)」「5つのノー(5 No’s)」という包括的な枠組みを示し、政府・企業・社会全体が一体となって取り組む必要性を訴えた。
「5つの先駆」では、制度構築、技術開発、デジタルインフラ、データベース統合、社会的責任の履行において常に先頭に立つ姿勢が求められる。「5つの実現」では、近代的でシームレスなデジタルインフラの整備、正確で共有可能なデータ基盤の確立、高度なデジタル人材と国民全体のデジタル素養の向上、強靭な国内デジタル企業エコシステムの育成、安全で人間中心のデジタル環境の構築が掲げられた。そして「5つのノー」では、ペーパーレス・キャッシュレス・ボーダーレスの徹底、停滞なき発展、汚職や利権の排除、縦割り構造の解消、そして「誰一人取り残さない」デジタル変革が国家的使命として明確にされた。
今後の重点分野として、首相は産業、農業、サービス、社会インフラの全領域でデジタル化を進める方針を示した。産業分野では、基幹産業や戦略産業を中心にデジタル技術とイノベーションを活用した再編を進め、高付加価値を生み出す「デジタル工業団地」の早期形成を目指す。農業分野では、デジタル農民やスマート農村モデルを軸に、ハイテク農業とグリーン転換を組み合わせ、ベトナムブランドの高品質農産物の創出を図る。
サービス・商業分野では、金融、物流、観光を中核とするスマートなデジタルサービス基盤を整備し、EC拡大やキャッシュレス決済を通じたデジタル消費の喚起を重視する姿勢が示された。さらに医療や教育では、電子カルテやデジタル成績証明書の導入を進め、行政手続きの抜本的な簡素化と透明化を図るとともに、国民の安全網としてのデジタル社会保障を構築するとしている。
制度面では、科学技術省が2026〜2030年の国家デジタル経済・デジタル社会発展プログラムを2025年末までに策定し、公安省が国家データ経済フレームワークを2026年初頭までに整備する方針が示された。加えて、サイバーセキュリティとデジタル主権の確保、国際協力の強化にも言及し、ベトナムが国際的なサイバー犯罪対策やデジタル貿易の枠組みで主導的役割を果たす意欲を示した。
一連の方針から浮かび上がるのは、デジタル経済を単なる成長分野ではなく、国家全体の構造転換を支える中核として位置づけるベトナム政府の強い意志だ。今後、これらの戦略が現場でどこまで実行され、国民生活や企業活動に具体的な成果として現れるかが注目される。デジタル化を通じて包摂的な成長を実現できるかどうかが、ベトナム経済の次のステージを左右することになりそうだ。














