シンガポールの11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.2%と、前月から横ばいで推移し、市場予想の1.3%を下回った。サービス価格の上昇が見られた一方で、電力料金の下落がそれを相殺した形だ。私用交通や住居費を除いたコアインフレ率も同じく1.2%となり、こちらも予想を下回った。内訳を見ると、サービスインフレは1.9%へと上昇し、タクシーや配車、カーシェアなどのポイント・ツー・ポイント交通費、さらには医療保険料の値上がりが主因となった。一方で、衣料品や履物、パーソナルケア家電の価格下落に加え、電力料金の低下が小売およびその他の財価格を押し下げ、全体の物価上昇を抑制した。
金融当局であるMonetary Authority of Singapore(MAS)は声明で、2025年のコアインフレ率を約0.5%と見込み、2026年には0.5〜1.5%へ上昇すると予測している。総合インフレ率についても、2025年は0.5〜1.0%、2026年は0.5〜1.5%と比較的落ち着いた水準が想定された。もっとも、地政学的要因に起因する供給ショックが輸入コストを急騰させるリスクがある一方、世界需要が想定以上に弱含めば、コアインフレが低位にとどまる可能性も指摘している。
今回のインフレ指標は、足元の景気指標が総じて良好であることと対照的だ。11月の非石油輸出は前年同月比11.6%増と市場予想を大きく上回り、第3四半期の経済成長率も4.2%と、堅調な拡大を示した。これを受けてMinistry of Trade and Industry Singaporeは年間GDP成長率見通しを「約4%」へ上方修正し、2026年についても1〜3%成長を見込む。世界経済の不確実性が続く中でも、製造業と輸出需要が想定以上に底堅かったことが背景にある。
MASは、世界経済への関税リスクを踏まえて年初に金融緩和を行った後、直近2回の会合では金融政策を据え置いている。インフレが落ち着きを保つ一方、成長は堅調という現在の状況は、当面の政策運営に柔軟性を与える。今後は外部環境の変化、とりわけ地政学リスクと世界需要の動向が、物価と金融政策の方向性を左右する焦点となりそうだ。














