香港の著名な実業家であり、カトリック信徒、そして民主化運動の象徴的存在でもあるジミー・ライ氏が、香港国家安全維持法に基づく罪で有罪判決を受けた。この判決は国際社会に衝撃を与え、多くの識者や人権擁護者から「司法ではなく権威主義の誇示だ」と強い批判が上がっている。米国の神学者ジョージ・ワイゲル氏は、この裁判を「最初から結論が決まっていた見せ物裁判」と断じ、正義とは無縁のものだと語った。さらに、判決を「香港の中核的価値を守るものだ」と述べた香港行政長官の発言についても、スターリン時代の粛清裁判になぞらえ、体制の価値観を露骨に示すものだと皮肉を込めて批判している。
ジミー・ライ氏は、民主派メディア「アップル・デイリー」を創設し、長年にわたり言論の自由と報道の自由を訴えてきた人物である。1997年の香港返還に際し、中国は「一国二制度」のもとで高度な自治と司法の独立を保障すると約束したが、2019年の大規模な民主化デモを転機に状況は一変した。翌2020年、中国政府は国家安全維持法を施行し、これを根拠にライ氏は同年8月に逮捕、12月以降は収監されたままとなっている。外国勢力との共謀や扇動的出版物の発行をめぐる罪について、ライ氏は一貫して無罪を主張してきたが、今回の有罪認定により、最終的には終身刑の可能性もあるとされている。量刑は2026年初頭に言い渡される見通しだ。
今回の判決と前後して、香港最大の民主派政党が解散を決定したことも明らかになった。30年以上にわたって活動してきた同党の関係者は、解散しなければ深刻な報復を受ける可能性を示唆されたと語っており、香港における反体制勢力への圧力が一層強まっている現実を浮き彫りにしている。数百人規模の活動家や弁護士、政治家が逮捕、投獄、あるいは国外亡命に追い込まれてきた中で、ライ氏の存在は特に国際的な注目を集めてきた。
ライ氏が国外へ逃れる道を選ばなかった理由には、彼のカトリック信仰が深く関わっている。2020年のインタビューで彼は、「ここを去ることは、自分の運命だけでなく、神と信仰そのものを捨てることになる」と語り、信念に基づいて香港に留まる決断を明かしている。現在までに約1,770日間、独房に近い環境で拘束される中でも、彼は獄中で宗教画を描き続け、ニューヨークの大聖堂に展示されたキリストの磔刑画もその一つだとされている。
この事件をめぐっては、米国務省や米国の議員、カトリック司教らがライ氏への支持を表明してきた。報道によれば、ドナルド・トランプ米大統領が中国の習近平国家主席に対し、直接釈放を求めたとも伝えられているが、実際にどのような外交的圧力が作用するかは不透明だ。ライ氏は英国籍を持つが、英国政府の公式な対応は限定的であり、今後の動きが注視されている。家族もまた国際社会に訴え続けており、息子は「父を獄中で死なせたくない」と切実な思いを語っている。ジミー・ライ氏の裁判は、香港における自由と法の支配がどこまで後退したのかを象徴する出来事であり、その行方は香港のみならず、国際社会全体にとっても重い問いを投げかけている。














