米英が医薬品価格で歴史的合意へ

米国政府は、英国との間で医薬品価格に関する「基本合意」に達したと発表した。発表を行ったのは、アメリカ通商代表部(USTR)、商務省、保健福祉省(HHS)で、米英の経済連携を強化する「経済繁栄協定(EPD)」の重要な成果として合意の意義を強調している。トランプ大統領とスターマー首相が合意したこの枠組みは、長年の課題だった米英間の医薬品貿易の不均衡を是正し、英国で事業を行う製薬企業により良い環境を整えるとともに、英製薬企業による米国への投資継続を確保し、アメリカの製薬開発・製造の競争力を高める狙いがある。

米国側は今回の合意について、長年アメリカの患者が他の先進国より高い価格を支払うことで医薬品の研究開発を“事実上補助してきた”状況を変える初めての大きな一歩だと評価している。通商代表のグリア大使は「米英の革新的医薬品の価格設定に関する交渉結果は、両国の投資とイノベーションを後押しする」と述べ、他国にも同様の見直しを求める姿勢を示した。

今回の基本合意において英国が示した最大の譲歩は、国民保健サービス(NHS)による革新的新薬の支出を増やすことである。具体的には、これまで10年続いていた新薬支出の抑制傾向を逆転させ、新薬の実質価格を25%引き上げる方針を明らかにした。また、英国において製薬会社に幅広い値引きを求める仕組みとして導入されている「自主的薬価制度(VPAG)」についても、新薬価格がポートフォリオ全体の値引き要求で相殺されないよう配慮する姿勢を示している。特に、企業に課される返還率は2026年に15%へ引き下げられ、制度期間中はその水準以下に保たれる。

さらに、この合意はトランプ大統領による「最恵国(MFN)薬価政策」発表からわずか2カ月後に実現しており、国際医薬品価格の不均衡是正に向けた米国の強い意志を示すものだ。CMS(メディケア・メディケイドサービスセンター)のクリス・クロンプ氏は、「各国が医薬品価格の負担を公平に分担することで、命を救う医薬品の提供を持続可能なものにできる」と述べ、国際協力の重要性を訴えた。

一方、米国は英国に対し具体的な見返りを提示している。今回の合意により、英国産の医薬品や原薬、医療技術製品は安全保障を理由に課される「232条関税」の対象外となり、さらに英国の薬価政策がトランプ政権下で「301条調査」の対象となることも避けられる。また米国政府は、英国民が最新の医薬品にアクセスできるよう支援することも約束した。

保健福祉省のロバート・F・ケネディJr.長官は「アメリカ国民は、自分たちが資金支援してきた医薬品に世界最高額を支払うべきではない」と述べ、今回の合意が世界の医薬品イノベーション環境を改善し、米英貿易のバランスに長く必要とされてきた変化をもたらすと評価した。

今回の米英合意は、医薬品価格を巡る国際的な議論に新たな基準を示す可能性がある。他の先進国にも影響を与え、国際薬価の負担構造や製薬企業のグローバルな投資方針に波及することが予想される。今後、米国が他国とも類似の交渉を進めれば、世界的な医薬品価格のあり方そのものが大きく変わる可能性があり、その動向が注目される。

https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/december/us-government-announces-agreement-principle-united-kingdom-pharmaceutical-pricing