シンガポール労働力の中で、海外で6カ月以上フルタイム勤務した経験を持つ人が約7万6,000人、つまり全体の3.1%に上ることが最新の「Labour Force in Singapore」速報版で明らかになった。今回初めて実施された海外勤務経験に関する調査で、シンガポール人および永住権保持者の働き方の広がりが浮き彫りとなっている。最も人気のある渡航先は中国本土で、18.3%が直近の海外勤務先として選んでいた。続いて米国が13.6%、そして地理的にも近いマレーシアが10.1%という結果になった。
中国で働いた人々の多くは製造業に従事しており、米国で働いた人々は専門サービスや情報通信、金融・保険といった成長産業が中心だった。マレーシアで働いた人は製造業や建設業が多く、周辺地域での実務経験がキャリア形成に繋がっている様子がうかがえる。また、海外勤務経験者のうち、45.2%が「専門職」、30.7%が「管理職」を担っており、高度なスキルと役職を持つ層ほど海外での機会が多いことが明確になった。専門職では事業・管理関連や科学・工学分野が多く、管理職では行政・商業管理や生産関連の職務が代表的だった。
海外経験はキャリア中盤層に特に多くみられ、40代では4.6%、50代では4.5%が海外勤務歴を持っていた。しかし、多くは20代後半から30代前半に初めて海外に出ており、若いうちの経験がその後のキャリア形成に影響していることがわかる。一方で、60代では2.6%、30代では2.5%、25〜29歳ではわずか0.5%と、年代によって分布に大きな差があった。
また、海外勤務経験者は現在の地位や給与面でも優位に立つ傾向が見られた。管理職層では7.7%が海外勤務経験を持ち、月収3万シンガポールドル(約231万円)以上の高所得層では16.8%が海外勤務経験者だった。月収1.5万〜1.9万シンガポールドルの層では10.6%、5,000〜9,999シンガポールドルでは約3%と、所得が高いほど国際経験がある割合が高まる。
シンガポール政府は、この傾向について「グローバルビジネスハブとして成長するうえで、国際経験はリーダーシップ形成や異文化対応能力の獲得に不可欠である」と指摘している。さらに、将来より高収入の職務を目指すなら、積極的に海外勤務の機会を求めることがキャリア形成に有効であると強調した。
シンガポールという高度に国際化した社会では、海外経験の有無がキャリアアップの分岐点となりつつある。企業側もグローバル市場を見据えた人材育成を重視しており、今後も海外派遣や海外研修の需要は高まっていく可能性が高い。若手にとっても中堅層にとっても、海外で働くことは将来の選択肢を広げる重要なステップになっていくだろう。














