異例の協力 英・シンガポール・タイが同期型FX決済の実験開始

英イングランド銀行、シンガポール金融管理局、タイ中央銀行の3機関が、国境を越えた外国為替(FX)取引をより安全かつ効率的に結びつけるため、同期型決済の仕組みを共同で検証することを発表した。今回の協力は、各国の決済インフラをつなぎ、異なる技術環境や制度を跨いでもリアルタイムで安全に取引を完了させることを目指す、国際的な金融インフラ整備の大きな一歩とされている。

この取り組みは、これまでの「Project Meridian FX」で得られた知見を土台に、3つの中央銀行がそれぞれ持つ決済システムのシミュレーション環境と、分散型台帳技術(DLT)を用いた実験環境を組み合わせて動作させることで、FX取引の同期決済が実際に機能するかを検証するものだ。実験では、各国のリアルタイムグロス決済(RTGS)を模したシステムを接続し、異なる時間帯やインフラ、規制下であっても確実に決済できる仕組みをテストする。特に、複数の通貨を同時に交換し、取引のどちらか一方が未成立になるリスクを排除する「Payment versus Payment(PvP)」の実現は、国際金融において長く課題とされてきた領域である。

イングランド銀行は、このプロジェクトがグローバルな金融システムをより開かれたものにし、新しいタイプのFX決済チャネルを生み出す可能性があるとコメントしている。また、同行が進める「RT2 Synchronisation Lab」と連動し、今後の決済インフラの進化に向けた一連の戦略の一部になるとしている。シンガポール金融管理局は、トークン化された金融資産が国境を越えてスムーズにやり取りされるためには国際協調が不可欠だと強調し、今回の連携が異なる国のインフラをつなぐ実践的な一歩だと述べた。タイ中央銀行も、この仕組みがPvP取引の効率性を高め、将来的には有価証券の受渡しと決済を結びつけるDelivery versus Payment(DvP)にも応用できると期待を示している。

金融市場がデジタル化するなか、中央銀行同士が異なる決済システムを連携させる動きは、今後の国際資金移動の在り方を左右する重要なテーマだ。特に、トークン化資産や分散型台帳技術が普及するにつれ、国境を越えた決済インフラにはスピード、透明性、相互運用性がより強く求められる。今回の協力は、3つの国と地域が持つ制度と技術がどこまで整合できるのかを見極める試金石となり、その成果次第では、より多くの中央銀行や金融機関が同様の仕組みを採用する可能性もある。

今後、実験結果はそれぞれの国が進めるデジタル決済インフラの設計にも反映される見込みだ。海外送金の高速化やコスト削減、取引リスクの低減といった効果が実現すれば、国際金融の仕組み自体が大きく変わる未来も見えてくる。今回の共同検証は、世界の金融システムが次の段階へ進むための重要な一歩として注目されている。

https://www.bankofengland.co.uk/news/2025/november/boe-mas-bot-to-explore-synchronised-fx-settlement-across-borders