香港、人民元利用拡大へ大きな一歩

香港が人民元の国際化を後押しする動きは、企業が中国本土との取引で人民元による請求や支払いを採用する強力なきっかけになる、という声が金融業界から上がっている。政府が率先して人民元での支払いや人民元建て債券の発行を進めていることは、ここ数年で最も大きな政策的前進と評価されており、人民元建ての財務・資金管理商品に対する需要拡大も見込まれる。ただ一方で、学術界からは本土の厳しい資本規制という“最大の制約”が依然として立ちはだかっているという指摘も根強い。

デロイト中国のエドワード・オウ氏は、香港政府が人民元での支出を開始したことが市場に明確なシグナルを送り、企業による人民元の採用を後押しすると述べた。特に外資系企業にとっては、請求や支払いの一部を人民元に切り替え、CNHやCNYの管理体制を整えることが、広東・香港・マカオ大湾区での競争力確保に不可欠になると語った。企業が人民元を中核に据えた資金管理を行えば、リスク管理の高度化や流動性の集中化など、財務効率の大幅な改善が期待される。

香港はすでに世界最大のオフショア人民元プールを形成しており、その規模は1兆元に達する。政府による人民元決済の拡大は、本土とのビジネスを行う他地域にとっても“モデルケース”となる動きだと専門家はみている。香港大のジョセフ・チャン氏は、政府が選定した本土側のサービス提供者への支払いを人民元で始めることは、国際化へ向けた小規模ながら重要な実証実験だと指摘した。安全重視の政策運営で知られる香港にとって確実性の高い一歩だが、慎重すぎる姿勢が急速に変化する世界の金融市場に乗り遅れる可能性もあると懸念を示した。

一方で、金融業界はより前向きだ。スタンダードチャータード銀行のベッキー・リウ氏は、香港と中国本土双方が人民元の国際利用拡大に向けた施策を相次いで打ち出していることを「ここ数年で最大の前進」と評価する。オンショアレポ市場の開放や香港金融管理局による人民元流動性ファシリティの改善などが進み、人民元建ての貿易、投資、融資の拡大が大きく加速する可能性が高いと語った。

しかし、中国本土の資本口座の完全開放という核心部分には依然として課題が残る。ESSECビジネススクールの経済学者ジャマス・リム氏は、過去に金融抑圧から資本自由化へ移行した各国が何らかの金融危機を経験しており、中国も例外ではないと警告する。大規模な資本流出や通貨ショックに耐えうる体力が整わない限り、本格的な人民元の国際化は慎重かつ段階的に進むほかないという。

香港の今回の取り組みは、企業に人民元の利用拡大を促す強い流れを生みつつあるものの、中国本土の規制という本質的な課題を残したままの“漸進的な国際化”が続く見通しだ。今後は政策の実効性と市場のダイナミズムの間で微妙なバランスを取りながら、香港がいかにしてオフショア人民元センターとしての地位を強固にできるかが注目される。

https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3332978/hong-kongs-push-yuan-usage-serve-catalyst-corporate-adoption