シンガポール、石油大手への炭素税優遇で透明性に疑問の声

シンガポール政府が世界的な石油大手に対して与えている炭素税の優遇措置が、再生可能エネルギーへの移行を阻害するのではないか――そんな懸念の声が環境保護団体の間で高まっている。現在、東南アジアで唯一炭素税を導入しているシンガポールだが、政府が一部企業に「特別な減免」を与えているとの報道を受け、透明性を求める動きが強まっている。

環境団体は、国家気候変動事務局(NCCS)がどの企業にどのような「炭素排出枠」や減免措置を与えているのかを公表するよう要求している。政府側は「特定企業の事業戦略や運営に関わる情報が漏れるおそれがある」として詳細を非公開にしているが、その不透明さが批判の的となっている。

炭素税は2019年に導入され、当初は1トンあたり5シンガポールドル(約3.7米ドル)に設定されていた。その後段階的に引き上げられ、2026年には45シンガポールドル(約34.7米ドル)、2030年には最大80シンガポールドル(約60米ドル)まで上がる見込みだ。対象は国内排出量の約7割を占める大規模施設であり、エクソンモービルやシェル、シェブロンといったエネルギー大手が主要な納税者とされている。

ただし、これら企業の実際の排出量や、減免措置による実質的な負担がどの程度かは公表されていない。環境団体「LepakInSG」は「企業の排出量を開示すれば、市民が彼らを監視できる」と主張する。さらに、家庭への影響についても試算を行い、炭素税が50シンガポールドルに達した場合、一般的な4部屋の公営住宅世帯で月額約8ドル(約620円)の電気代上昇が見込まれるという。それでも多くの家庭には受け入れ可能な範囲だが、政府は低所得層への支援策も検討すべきだと訴えている。

一方、政府は「炭素税の目的は企業にクリーン技術投資を促すことであり、優遇は無制限ではない」と説明する。NCCSによれば、排出削減計画が信頼に足ると認められた企業のみに一部免除を与えており、「カーボンリーケージ(企業が規制の緩い国へ移転する現象)」を防ぐ狙いもあるという。しかし、実際にどの程度の排出削減が達成されたかは「正確な測定が難しい」として明らかにされていない。

ISEAS-Yusof Ishak研究所の上級研究員ヴィノード・トーマス氏は「シンガポールは世界の注目を集める存在だ。単独での努力も重要だが、東南アジア全体で取り組むことが決定的に重要だ」と述べている。

また、米国ではトランプ大統領が国際的な海運業への炭素税導入構想を阻止する動きを見せており、世界的な炭素課税の進展にも暗雲が立ちこめている。フロリダ州立大学のシュ・リン・スー教授は「トランプ政権が化石燃料に固執する限り、国際的な炭素税導入は大きく遅れるだろう」と指摘する。

シンガポール国内の若者主導の気候団体「Energy CoLab」の共同創設者レイチェル・チャン氏は、「データがなければ政策の有効性を評価することもできない。私たちは誠実で透明な制度設計を求めている」と語る。世界の気候政策が揺らぐ中、シンガポールが模範を示せるかどうかが問われている。

https://abcnews.go.com/Business/wireStory/singapore-faces-pressure-reveal-carbon-tax-concessions-oil-126964471