シンガポールでインフレ再加速、10月は予想超えの上昇

シンガポールのインフレ率が再び上昇し、10月の物価上昇率は予想を大きく上回って約1年ぶりの高水準となった。8月に4年ぶりの低水準を記録した後、物価は再びじわりと上向き、10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.2%の上昇となった。これはロイターがまとめたエコノミスト予測の0.9%を大幅に上回り、9月の0.7%からも加速した形だ。また宿泊費や自家用車を除いたコアインフレ率も1.2%となり、前月の0.4%から大幅に上昇。こちらも事前予想の0.7%を超える強さを示した。

もっとも、前月比では総合CPIの変動はゼロで、コアインフレ率は0.5%の上昇にとどまっている。しかし前年同月比での加速の背景には、輸送分野の3.4%という大幅な上昇や、医療費の4%上昇がある。シンガポール貿易産業省によると、コアインフレの押し上げにはサービスや食品、小売といった幅広い分野の上昇、そして電気・ガス料金の下落幅が縮小したことが影響しているという。

投資・取引プラットフォームのeToroでアナリストを務めるザビエル・ウォン氏は、「今回の結果は危機的ではないが、注意を引くには十分だ」とコメント。ただし物価上昇は医療や個人輸送など特定分野に偏っており、広範なインフレ圧力ではないとも指摘した。国内需要についても、「消費は続いているが、価格を押し上げるほどの自信は戻っていない。」として、インフレが自然に広がる状況にはまだ至っていないとの見方を示している。

こうした中で、シンガポールは経済見通しを上方修正している。10月末、政府は2025年のGDP成長率見通しを従来の1.5〜2.5%から4%へと引き上げた。第3四半期の実質GDP成長率は前年同期比4.2%となり、市場予想を上回る強さを見せた。第2四半期の4.7%に続く高い伸びであり、世界経済の底堅さが示された形だ。ただ同時に、貿易産業省は2026年には米国による関税が世界需要を圧迫し、成長が減速する可能性が高いと警告している。

シンガポールの対米輸出には現在10%の一律関税が適用されており、2004年から自由貿易協定を結んでいるにもかかわらず、貿易赤字のある国であっても対象となる。この国は世界でも類を見ないほど貿易依存度が高く、世界銀行のデータによれば2024年の貿易依存度はGDP比320%超に達する。そのため外部環境の変化は直ちに経済に影響を及ぼす。

実際、非石油国内輸出(NODX)は第3四半期に前年同期比3.3%減と落ち込んだ。特に医薬品と石油化学製品の輸出が振るわなかった。しかし10月に入ると状況は一転し、NODXは前年同月比22.2%増と急回復した。非貨幣用金(いわゆる金地金)や電子製品の輸出が伸びたことが背景にある。

金融政策面では、シンガポール金融管理局(MAS)は10月会合で政策を据え置いた。経済成長が予想以上に力強かったことや、インフレが落ち着いた範囲内にあると判断したためだ。MASは2025年のインフレ見通しを0.5〜1%と控えめに見積もっているが、民間の専門家はより高い水準を予想する。メイバンクのチュア・ハクビン氏は、2026年にはコア・総合いずれも1%を上回る可能性が高いと指摘。その理由として、公共交通運賃の値上げ、炭素税の引き上げ、航空券への新たなサステナブル燃料課徴金などを挙げている。

同氏は、強い経済成長や金利低下、信用拡大が重なれば消費者物価はさらに押し上げられると分析する。現在のシンガポールは力強い経済の追い風と、じわりと高まるインフレ圧力のちょうど狭間に立つ形だ。国内需要の回復が進めばインフレは広がり、逆に世界需要の減速が強まれば再び沈静化する可能性もある。2025年以降のインフレ動向は、内外環境のバランスが鍵を握る局面に入ったと言えるだろう。

https://www.cnbc.com/2025/11/24/singapore-inflation-october-cpi-tops-estimates.html